だれもが「マーケティング」という言葉をご存じかとは思いますが、
「マーケティングとは、何か?」と、真正面から聞かれると、
端的に答えることができる人は、意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、「マーケティングとは何か」を、分かりやすく、ご説明したいと思います。
言語的な意味
「マーケティング(Marketing)」とは、「Market」という単語に、「ing」がついています。
Marketを英和辞典で引いてみると
【名詞】
1. 市(いち); 市場(いちば)
2. (通例,特定の)食料品店,マーケット.
3. (特定の物品・地域の)売買市場(しじよう).
4. 需要,はけ口,販路 〔for〕.
5. 市況; 市価,相場.
【動詞】
他動詞〈品物を〉市場に出す; 売る.
自動詞《主に米国で用いられる》 買い物をする.
【語源】
ラテン語「商売」の意
となっています。
「~ing」がついているので、動詞として捉えると
「Marketing」は「市場に出すこと;売ること」になります。
「売る」という言葉には、Sellという単語もあります。
しかし、SellingとMarketingは、似て非なるものです。
経営学の泰斗であるドラッカーは、こう言っています。
「マーケティングの理想は、セリングを不要にすることである」
(マネジメント【エッセンシャル版】)
では、「マーケティング」と「セリング」は、なにが違うのでしょうか。
セリングとマーケティング
「売る」ということを、分かりやすくするために、
「売る」という行動を、「釣り」という行為に置き換えて、考えてみましょう。
釣りに行くときに、
「捕まえたい魚を決めて、準備をして、魚がいそうな漁場に行く」ステップと
「そこにいる魚を、捕まえる」ステップがあります。
魚が豊富にいるときには、とりあえず、海に出ても、魚は見つかるでしょう。
しかし、運が悪いと、魚がまったく見つからず、
待てども、待てども、魚が釣れないかもしれません。
話を元に戻すと、
前者の「魚を意識して、準備する」のがマーケティング、
後者の「海で、魚を捕まえる」のがセリングです。
ドラッカーが言う
「マーケティングの理想は、セリングを不要にすることである」
とは、準備をしっかりすることで、
捕まえようとしなくても、魚が集まってくるようなビジネスを
構築しましょう、ということです。
商品を作っても、サービスを提供しても、
お客様(市場)が存在しなくては、売上を上げることができません。
確実に、効率的に、売上を上げるためには、
お客様(市場)が、本当に存在するのか、
お客様(市場)が、なにを求めているのか、
を、意識する必要があります。
マーケティングとは、marketという文字が含まれています。
売上が上げるためには、marketを意識して準備するのは、
当たり前と言えば、当たり前です。
それが、「マーケティング」です。
マーケティングは、どんな役に立つのか。
では、実際に「マーケティング」が活用されるケースを見てみましょう。
マーケティング調査
企業が売上を上げるためには、商品やサービスを、開発しなくてはなりません。
その時、売れる商品やサービスを開発するためには、
お客様(市場)が何を求めているのかを意識する必要があります。
マーケティング活動
お客様が求める商品が完成したとしても、
お客様に知って頂かなければ、買って頂くこともできません。
商品やサービスを、お客様に知って頂く活動が必要になります。
マーケティング戦略
市場には、多くの競合他社が存在します。
お客様にとってのベストになるためには、自社の強みを磨き、
独自の立ち位置を確立しなくてはなりません。
そのためには、戦略が必要です。
ブランド戦略、イメージ戦略、価格戦略、など、
さまざまな戦略がありますが、
いずれも、お客様と、競合他社を意識したものになります。
マーケティング分析
戦略を立てるためには、正確な情報が必要です。
入手できるさまざまな情報を分析して、お客様、競合他社の状態を
精緻に把握する必要があります。
また、販売促進のために行った施策が、
きっちりと効果が発揮できているか、分析する必要もあります。
つまり、マーケティング理論を学ぶことで、
「商品開発」
「情報発信」
「市場とのコミュニケーション」
「戦略立案」
「情報分析」
に、正しく取り組むことができます。
マーケティング戦略の基本(マーケティング志向で競争戦略を考える)
これまで、マーケット(市場)という言葉を、
「お客様」と「自社」という2つの要素で、捉えてきました。
しかし、マーケット(市場)には、もうひとつ、重要な要素があります。
それは、競合他社の存在です。
マーケット(市場)においては、競合他社も、ビジネスチャンスを求め、
お客様に、さまざまな商品やサービスを提供します。
お客様も、自分の求めることを叶える、さまざまな選択肢があるのであれば、
当然、ベストな選択肢を選びたい、と考えるはずです。
つまり、お客様にとって、自社の商品やサービスがベストであって、
初めて、選んでいただくことができる、と言えます。
マーケット(市場)を理解するために、この、
「お客様(Customer)」
「競合(Competitor)」
「自社(Company)」
の三者で捉えるのが、「3C」と呼ばれる考え方です。
自社が競合他社に勝っているのは、どのような点か、
自社が競合他社に負けているのは、どのような点か、
今度、どのような追い風が吹くだろうか、
それとも、どんな向かい風が吹くだろうか、
競合他社に打ち勝ち、お客様に選んでいただくためには
さまざまな観点で、現状を分析し、対策を講じ、
計画を立案し、実行に取り組まなければなりません。
しかし、どんなに足掻いても、
現状の実力で、競合に打ち勝つことが難しいようなら、
他のお客様を探す、あるいは、自社の商品やサービス自体を
変えてしまうという選択肢を取らざるを得ません。
3Cは、シンプルですが、もっとも汎用性が高く、そして、奥深い概念です。
3Cを意識して、企業活動を計画し、実行し、分析しましょう。
マーケティング志向に基づいた商品開発
マーケットイン
お客様が求めていることに耳を澄まし、真摯に受け止め、
それに応える商品を作れば、「売れる」商品を作ることができます。
これを「マーケットイン」と言います。
[マーケットインの例]
ハイブリッドカー
燃費を向上させることで、ガソリン代を減らしたい、
排ガスによる空気汚染を減らしたい、ということは、
車の所有者は、だれもが望んでいます。
それは、現代も、昔も、不変です。
多くの企業が、創意工夫を凝らし、燃費の改善に取り組んできましたが、
トヨタ自動車は、ハイブリットという技術を開発し、
それまでには考えられなかったほどの低燃費を実現しました。
トヨタ自動車は、
「社会が求めていること(低燃費)」に、「技術(ハイブリッド)」で応えた、
と言えます。
プロダクトアウト
お客様は、必ずしも、自分にとって、なにが価値があることなのか、
ということを、すべて把握できているわけではありません。
本当は価値があることでも、気づいていないために、
まだ求めていない、ということがあります。
お客様が求めていることに応えて、商品が登場するのではなく、
商品が登場することで、お客様が初めて、その価値に気づく、ということが、あります。
これをプロダクトアウトと言います。
[プロダクトアウトの例]
T型フォード
世界で最初に自動車が登場したのは、1769年の、蒸気砲車であると言われています。
しかし、その後も、19世紀までは、人間の移動手段は、「馬」のままでした。
というのも、自動車は手作りで、非常に高価なものであり、
貴族や富裕層だけが所有できるものだったからです。
ヘンリー・フォードは、自動車は素晴らしく便利なのに、
社会で広く使われないのは、価格が高いからだ、と考えます。
そして、もし、安くて性能の良い自動車があれば、必ずや、だれもが自動車を使うに違いないと思い、
大量生産の体制を整えることで、安価な自動車の生産を可能にしました。
その結果、自動車は、馬にとって代わって、人類の移動手段の中心になっていきました。
フォードはこう語っています。
「市場に何が欲しいかを聞けば、「もっと早い馬が欲しい」というはずだ。」
市場のニーズに合わせて、商品づくりをすることだけが、
かならずしも正しいわけではないと言えます。
勘違いされやすいのですが、
「プロダクトアウト」は、「ニーズが無い」ところに、
商品本位で商品を打ち出すことではありません。
「プロダクトアウト」の商品も、きっちりと「ニーズ」を捉えて、開発されています。
ただし、「マーケットイン」との違いは、
それが、市場が「まだ、気づいていない」ニーズである、ということです。
市場が提示したニーズではなく、商品からニーズを提示することを
「プロダクトアウト」と呼んでいるのです。
「マーケットイン」は顕在化したニーズに応える、
「プロダクトアウト」は潜在状態のニーズを狙う、
という違いであり、
いずれも、お客様(市場)を意識しているという点では、
マーケッティング志向であると言えます。
※ 「プロダクトアウトでありつつも、マーケットインである商品開発」について、
書かせて頂いた記事はこちらです。
→競争に巻き込まれない商品開発「未来からのマーケットイン」とは?
新しく生まれ続けるマーケティング手法
21世紀に入り、インターネットやITの登場で、お客様、市場のあり方も大きく変わりました。
その影響を受け、マーケティングも、さまざまな変化を見せています。
まず、 消費者は、検索を用いることで、自ら情報を探すことができるようになりました。
企業が発信する情報は、自社を有利にする目的で発信されたものが多いと判断され、
消費者は、企業からのメッセージを押し付けられることを、嫌うようになりました。
求める情報を提供することで、見つけてもらうことを目指す「コンテンツマーケティング」
情報を提供することで、信頼を構築し、購買に導く「インバウンドマーケティング」
といった手法が生まれています。
スマートフォンの普及により、ひとりひとりの行動を、正確に取得すること、
そして、ひとりひとりにカスタイマイズした情報を発信することが可能になっています。
ひとりひとりの趣味嗜好に合わせた情報発信で、関係構築を目指す「One to Oneマーケティング」
GPSから取得できるロケーションデータを活用する「ジオマーケティング」
といった手法も生まれています。
また、キャッシュレスの普及で、オンラインでのアカウントと、
オフラインのリアル購買を紐づけることが可能になってことで、
リアル店舗での購買活動を基に、オンラインでのプロモーションを行う
「オムニチャンネルマーケティング」といった手法や、
人力では分析できない膨大なビッグデータを、
AIを使って分析する「AIマーケティング」といった手法も生まれています。
これからも技術の発展とともに、多くのマーケティング手法が生まれていくでしょう。
いま、もてはやされている「マーケティング手法」は、次の時代では、役に立たないかもしれません。
しかし、いくら時代の流れが進んでも、技術が進んでも、
「買う」のを決めるのが「お客様(市場)」であることは変わりありません。
お客様に買って頂けるのは、お客様に必要とされるものだけです。
社会で生き残れるのは、社会で必要とされるものだけです。
いかに、お客様のお役に立つのか、社会に貢献するのかを考えることこそ、
マーケティングの原点と言えます。
マーケティング志向の7つの行動則
マーケティングの研究の歴史は長く、
さらに、時代に合わせて、新しい手法が、生まれ続けています。
そのすべてを学びつくすことは、極めて困難です。
今回、お客様、社会に貢献できる会社になるために、
マーケティングの観点で、実践すべき行動を
「マーケティング志向の7つの行動則」として、まとめました。
その7つとは
・お客様/見込み客の立場で考え、適切にコミュニケーションする
です。
伝統的な経済理論、マーケティング理論を網羅しつつ、
新しい時代でも陳腐化しない、幅広い業界で活用できる、
すぐに実践できる項目を定めました。
それぞれの項目を、より具体的に、どのように取り組んでいくべきかを、
各項目のリンク先で記載してます。
マーケティングについて、知識を深めたい方は、ぜひ、ご覧になってください。
記事がみなさまが、売上を上げる一助になれば、幸いです。
[参考リンク]
信頼を後押しとして、顧客が自ら買いたくなる、スムーズなマーケティング活動の記事はこちらです。
→顧客に寄り添い、顧客との信頼関係を築く「インバウンドマーケティング」とは
Leave Comment