「マーケティング志向のための7つの行動則」の2項目となります。
[目次]
1.理念が大切であることを理解する
日本のスマートフォンにおけるiPhoneのシェアは40%を超えています(2019年12月時点)。
アップル以外にもスマートフォンを販売しているメーカーとして、
シャープ、富士通、京セラ、ソニー、サムスン、LG、ファーウェイ、シャオミ、OPPOなど、
多くのメーカーがスマートフォンを販売していることを考えると、
1社で40%というのは、圧倒的なシェアです。
iPhoneだけでなく、さらにiPadやMacも使う人が多いことを見ると、
アップルには熱烈なファンが存在すると言っても過言ではありません。
ファンは、他の選択肢にも目をくれず、信奉する製品を優先して買います。
なぜでしょうか?
それは、アップル製品が「使いやすく、クールで、先進的」という「信用」があるからです。
「買う」という行為において、「信用」は、とても大きな影響を持ちます。
なぜなら、商品を買うにあたっては、
事前にいくら調べても分からない「見えない部分」が、常に付きまとうからです。
(情報の非対称性)
たとえば、デジカメを購入するときを考えてみましょう。
レビューサイトでの口コミ、量販店で店員の話、マニアックなカメラ情報サイトの記事、
いろいろな方法で、情報を集めることができます。
しかし、どれだけ調べても、自分自身が使わないと分からないことが残ります
(友人の反応、故障しにくさ、カバン収納の納まり、故障時のメーカーサポートなど)
そもそも、人ごとに用途や環境は異なりますし、感覚も異なります。
レビューが良くても、実際使ってみると、思ったほど満足度が高くないことも、しばしばです。
(レビューや比較サイトも、販売促進のための自作自演のコメントが、少なからず紛れ込んでいます)
購入前に、「見えない部分」をどう評価するかは、消費者の想像に委ねられます。
信用があれば「大丈夫だろう」と思ってもらえます。
しかし、信用がなければ、「不安だから、やめよう」となります。
特に、体験型の商品(映画、ゲーム)はスペックで比較できないので、
「信用」がすべてといっても過言ではありません。
(映画を見るときに、「時間が長い」という理由で選ぶことは、ほとんどないはずです。)
情報を集めることは、手間がかかります。
安心で信用できる製品があるなら、考えるのも面倒なので、信用できるその製品にしておこう、と、
比較検討さえ発生しないこともありえます。
信用があれば、大きなアドバンテージを得ることができます。
「信用」の根拠となる情報源が多ければ多いほど、安心して「信用」できます。
口コミも、レビューサイトも、結局のところ、「信用」を高める方法の一つである、と言えます。
実績を積み重ねた結果、だれもが信用してくれるようになれば、「ブランド」として認められることになります。
そうなると、価格、知名度で圧倒的な優位を獲得することができます。
「信用」が大切だとして、では、どうすれば、信用してもらえるのでしょうか。
それは、まず、自社商品を手に取ってくださったお客様に対して、
きっちりとした商品をお届けすることで、期待に応えるということになります。
お客様の期待に応え続ければ、お客様の信用を、自然に獲得することができます。
しかし、いままで商品を手に取ったことがない人に対しては、実績をもって、信用してもらうことはできません。
いままで、商品を手に取ったことがない人は、「見えている部分」から、判断するしかありません。
つまり、「見えている部分」で、
自社がどんな会社で、どんなことを目指しているのか、ということを伝えていかなくてはなりません。
このとき、
「自社が現在、どのような会社なのか」「これから、どんなことを目指しているのか」
ということを明文化したものが、理念(お客様の目線から言うと、共通価値)になります。
自社がめざす姿を分かりやすく表明できれば、
それを期待するお客様が集まり、信頼関係に繋がります。
しかし、目指す姿が、分かりやすく表現できていない、あるいは、一貫して守れていないと、
自社がめざす姿と、お客様の期待が不一致を起こし、信頼関係が崩れてしまいます。
だからこそ、理念を分かりやすく表現し、一貫性を持たせて実現することが、重要になります。
表現をするということは、製品だけでなく、デザイン、広告、接客を含めた「すべて」をとおして、
一貫性を持たせなくてはならないということです。
理念を明確化し、一貫性を持たせることで自社の揺らぎを減れば、
結果として、商品を手に取ったことのない消費者だけでなく、
商品を購入してくださったお客様の信用を積み重ねていくことにも、
大きな効果をもたらしてくれます。
理念を貫くためには、
商品にかかわるすべての人、企業に所属するすべての人が、その理念を共有し、理解し、
さらにそれを長い期間をかけて、守り続けなくてはなりません。
決して簡単なことではありませんが、理念を貫き、本物になれば、
お客様の信用につながり、見えない部分をも輝かせてくれるのです。
事業の「目的」と、企業の「理念」は、混同しやすいですが、下記のように考えて下さい。
「目的」:お客様の要望
「理念」:お客様のこだわり
iPhoneの場合、
目的:「情報にアクセスしたい」、「音楽を大量に持ち歩き、外で聞きたい」
理念:「使いやすく」「クール」「先進的」「安全」
形:ユーザビリティの高い操作性、高いデザイン性、定期的な新機種投入、メーカー主導のセキュアな環境
2.全員で理念を共有する(全員の一貫性)
理念の共有は、全ての人が参加しなくてはなりません。
もし、ひとりでも理念を共有できていない人がいれば、その人が一貫性を破ってしまうかもしれません。
経営者、管理職、現場、新人、パート、営業、生産、開発、会社にかかわるすべての関係者が、
一人残らず、理念を共有しなくてはなりません。
ですが、理念の追求による見返りは、中長期的なスパンで実感できることが多く、
短期的な損得から逸脱することが多いため、
残念ながら、現場からの反対が起こったり、逸脱が起こることも考えられます。
反対を想像すると、全員を巻き込むことに躊躇しますが、
それを避けて、一部だけで行うと、結局、一貫性が保たれず、理念を守ることができなくなります。
理念を貫くためには、必ず、経営課題として、トップダウンで全社的に取り組むことが必要になります。
理念共有は、社員教育を通して行われます。
全員が理念を共有し、それがお客様の信頼に繋がれば、
結果として、業績の向上につながります。
そうすれば、理念に対しての信頼が生まれ、自分自身に対する自信と誇りに変わり、
それが長期にわたって守られれば、自社の企業風土、企業文化となり、
今まで以上に強固になるはずです。
(ビジョナリーカンパニーと呼ばれる企業には、素晴らしい企業風土が存在すると言われています)
3.理念を形にする(見える姿の一貫性)
アップルは、一言では言い表せないが、
だれもが同意できる「アップルらしさ」を貫いています。
それが何によって実現されているかというと、
・ミニマルな製品外観(デザイン)
・タッチによる分かりやすく使いやすいインターフェース(機能)
・無駄がないデザインのアップルストア(店舗)
・洗練されたTVCMやポスター(情報発信)
・iMac、iPod、iPhone、iPad、iPhone、iTuneの「i」(ネーミング)
そしてなによりアップルの顔ともいえる故スティーブジョブズの姿です。
アップル「らしさ」は、このように、いろいろな形で構成されているのです。
「理念」を掲げても、それが形になっていなければ、
周囲にそれを認めてもらえず、信用にもつながりません。
自社のありとあらゆるところで、理念を形にすることが大切です。
「理念」を形にするためには、絶え間ない努力と創意工夫が求められます。
だからこそ、「理念」を明文化し、全員で共有することが大切なのです。
しかし、全員で共有しようとしても、細部に関しては、個人解釈による逸脱が出てきます
一貫性を守るために、ブランディング管轄部門を設置したり、
エバンジェリストと呼ばれる啓蒙活動を専門に行う担当を設置することもあります。
4.守り続ける(時間軸での一貫性)
信用は一日にしてならず、理念に基づいた行動に取り組み始めても、いきなりは、信用してもらえません。
時間軸を超えて、守り続けてこそ、説得力が出てきます。
(理念共有やブランド構築は、中長期の時間軸で効果が表れるので、
短期的な測定が困難であり、費用対効果で最適化を行うことはできません。)
長い時間を重ね、積み重ねた信用も、無くなる時は一瞬です。
みなさんも、芸能人や政治家がスキャンダルを起こし、
徹底的に信用を失ったことを見られたことがあるのではないでしょうか。
ひとつでも嘘があると、すべてが嘘ではないかと思われてしまいます。
それまで、「良い印象」だった政治家や芸能人であればあるほど、
いままでの信用が大きければ大きいほど、失望失墜も大きくなります。
では、信用の失墜を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか。
それは、「だれも見ていないところでも、理念を貫く」ということです。
「だれも見ていないところで理念を破る」ということは、
「言っていること」と、「やっていること」が異なる、
つまり、嘘をついていることになります。
金メッキは、表面が剥がれてしまうと素地がばれますが、
純金は、どこを切っても純金です。
手を抜かずに、すべてにおいて、理念を貫き通しているからこそ、
本物であるといえるのではないでしょうか。
正直であること、嘘をつかないこと、
それを愚直に守り続けることこそが、
信用を守る、唯一の方法です。
〇「マーケティング志向のための7つの行動則」
・お客様/見込み客の立場で考え、適切にコミュニケーションする
〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の目的
マーケティングの基準軸を明確にすることで、創意工夫による、「需要の創造」「新商品の創造」「新技術の創造」「市場の創造」を促進する。
〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の意義
マーケティング志向を広めることで、企業の成果物を、適切な消費者にご採用いただくことを促進し、社会の進歩発展に貢献する
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