「マーケティング志向のための7つの行動則」の6項目となります。
売上から全経費を差し引いたものが利益です。
利益を高めるとは、「売上を極大に、経費を極小」にすることです。
たとえ、売上が増えても、それを理由に、無秩序な経費増加を許すと、
結局、経営体質の弱体化につながり、会社を危険にさらすことになります。
絶対に避けなくてはなりません。
しかし一方で、まったく経費を使わないで売上を上げることも、不可能です。
お客様に商品を手に取って頂くためには、自社のこと、商品のことを、
まず知って頂かなくてはなりません。
つまり、販売促進、広告宣伝が必要になります。
お客様からの信頼を勝ち取るために、
様々な情報発信、営業担当の日々の活動も欠かせません。
さらに、会社全体での理念共有には、社員教育が必要です。
タッチポイントを通して、理念が伝わるようにするためには、
店舗設計、広告宣伝への投資も必要です。
そして、理念を商品として形にするには、
研究開発や商品開発も必要です。
つまり、「売上を上げるためには、経費をかけなくてはならない」ということです。
間違えた経費の使い方は利益を食いつぶしますが、
正しい方法で経費を使えば、売上も、利益も増えます。
経費の使い方が、正しいのか、間違えているのか、を判断するため、
常に、費用対効果を振り返ることが大切です。
[目次]
1.費用対効果で、経費の使い方を最適化する
短期的な施策は、費用対効果や採算を確認しながら、
トライアンドエラーで最適化しましょう。
財務諸表上は「利益=売上‐原価‐販売管理費」で表すことができます。
今回は、
「販促キャンペーン単位」
「顧客単位」
「営業単位」
という切り口で、
「販売管理費」と「利益」の関係を捉えていきます。
1.1.販促キャンペーンの最適化
販促キャンペーンを行うのは、売上を伸ばすためです。
売上増による利益が、販促キャンペーンのコストを上回われば、
その販促キャンペーンは成功と言えます。
粗利40%の登山道具を販売しているとします。
100万円を投下して新聞の折り込みチラシを行った結果、
500万円多く、売上が上がったとします。
粗利40%なので、200万円の粗利となり、
広告費の100万円を差し引き、100万円の収益が出たことになります。
(費用に対しての収益倍率をROI:Return of Investmentと呼び、この場合は、100%です)
もし、費用対効果がマイナスであれば、その施策は失敗ですが、
費用対効果がプラスであれば、より積極的に広告宣伝を行うべきです。
固定費が大きく、変動費が低い事業は、
売上が上がるほど、利益が上がりやすい傾向があります。
たとえば、SaaS、ソフトウェア販売といったIT関係のビジネスは、
開発費が原価の大半を占めるため、売上拡大による原価の増加は多くありません。
つまり、売上拡大につながる販売促進費、広告宣伝費を、
積極的に投下できる業界であると言えます。
化粧品、宝飾品といった、粗利益率の高い商品も、同じことが言えます。
(ただし、キャパシティに限界があれば、それ以上、広告宣伝費を増やしても効果がありません。)
結果を確認し、販促キャンペーンの費用対効果がプラスだったとしても、
それで満足してはいけません。
さらに、費用対効果を高めることに取り組まなくてはなりません。
まず、広告宣伝が正しいターゲットに届いているのか、ということを確認しましょう。
販促キャンペーンが間違えたターゲットに届けば、経費が無駄になるだけでなく、
受け取った人にとっても迷惑になります。「だれ」に届けたいのか、
届けたい人に広告が届いているのか、ということを、振り返る必要があります。
WEBマーケティングは、レスポンスを確認することができます。
結果を常に確認して、最適化、改善に取り組みましょう。
また、伝える内容も、伝えたいことを一方的に伝えるのではなく、
受け取った人の心を動かすような内容にしなくてはなりません。
お客様の立場で考え、適切なコミュニケーションを取ることを心がけましょう。
1.2.「顧客獲得あたり」の採算を高める
ひとりの見込み客が、販促キャンペーンで、新たにお客様となり、
ある一定期間、ご発注を頂いたのち、離脱される、という状況を考えます。
お客様が顧客になってから離脱するまでに、会社が獲得できた総粗利が、
そのお客様を、新規獲得するための費用を上回れば、
会社は収益を得ることができた、と捉えることができます。
「新規獲得のための費用」をCPA(Cost per Acquisition)、
お客様の購買から「自社が獲得できた総粗利」をLTV(Life Time Value)
と呼びます。
イメージしやすいように、例を挙げてみます。
粗利40%の商品を販売します。
吉田さんとお取引をするために、
3000円のコストがかかったとします。
(つまり、CPAは3000円ということです。)
吉田さんは、3000円、2000円、5000円と、3回、
合計10000円の買い物をされましたが、
そのあと、休眠状態になりました。
総粗利は4000円なので、
CPAの3000円を差し引いた、1000円が、
吉田さんによって、会社にもたらされた利益となります。
(LTVは総粗利の4000円となります。)
インターネット広告の登場により、
クリック単位、あるいは、閲覧単位での広告課金が可能になり、
その結果、CPAを把握しやすくなりました。
さらに、ECサイトや会員ポイントカードの普及で、
どのお客様がどういう購買を行ったか、ということを、
オンラインとオフラインをまたがって、追跡できるようになり、
LTVも、把握できるようになりました。
その結果、CPAとLTVの両方を測定できる環境が整い、
費用対効果を、より容易に、より正確に判断できるようになっています。
このLTVの考え方は、BtoB、BtoCの
販売活動の違いにも表れています。
LTVが大きければ大きいほど、
ひとりの新規顧客の獲得に、大きな予算を使うことができます。
BtoBでは、
1商談で数百万円、数千万円、数億円といった購買もあります。
さらに、単発でなく、継続発注もあります。
そうなると、LTVは、さらに大きくなります。
つまり、BtoBでは、ひとりの新規獲得の予算は
大きく取りやすい、と言えます。
ただし、BtoC向け消費財よりもターゲットは狭いので、
絞りを効かせた情報発信、販売促進が必要になります。
そのため、法人営業担当による営業活動が中心になります。
※ 大型商談の成約について、記載した記事も掲載しております
→法人営業(BtoB)に役立つ経営書『大型商談を成約に導くSPIN営業術』のまとめ
LTVがCPAを上回っていたとしても、それで満足してはいけません。
LTVをさらに高め、CPAをさらに下げるよう、取り組む必要があります。
LTVを高めるためには、購買の頻度を多く、顧客でいる期間を長く、
そして、多くの種類の商品を購入して頂くことが大切です。
このために大切なことは、お客様に満足して頂くことです。
お客様の立場に立って、適切なコミュニケーションを行うことが大切と言えます。
1.3.営業活動の効率を上げる
アカウントと呼ばれる営業担当による営業活動は、
新規案件の獲得、信頼構築、購入決断の後押しなど、
極めて重要な役割を担っています。
特に、BtoBであれば、
専門知識と、柔軟で迅速な対応力が、求められるため、
営業担当による、きめ細やかな対応は、必須といえます。
しかし、売上を増やすために、営業人員も増やすと、人件費が増加します。
利益を上げるためには、できるだけ少ない人員で、できるだけ多くの売上を上げる必要があります。
少ない営業人員で、高い売上を上げるため、ツールを活用し、営業担当の負担を軽減し、
効果の出やすい営業活動に、注力できる環境を整備しましょう。
現在は、インターネットを通して、
お客様が自分自身で情報を取得できるようになっています。
お客様の情報収集に引っかかるように自社の情報を提供し、
自社の存在に「気づいていただく」ことができれば、
見込み客を探す手間を、削減することができます。
お客様は、売り込み、押し込みを嫌われます。
「お客様に気づいていただく」ことは、お客様に警戒心を抱かせない効果があります。
これをインバウンドマーケティングと呼びます。
お客様の情報収集に引っかかるために、お客様が見たくなるコンテンツを作りましょう。
検索で見つけて頂けるようSEO(Search Engine Optimization)を意識して、
コンテンツを作りましょう。
コンテンツは自社サイトに掲載するだけでなく、SNSにも掲載し、露出を増やしましょう。
コンテンツを充実させることで、自社が、信頼に足る専門家であることをアピールできます。
これをコンテンツマーケティングと呼びます。
大切なことは、情報を提供するだけで終わらせるのではなく、
見込み客に営業をかけることができる環境を作る、
つまり、情報収集に来た見込み客の連絡先を取得することです。
自社のサイトに、ホワイトペーパーを用意して、見込み客の連絡先を取得しましょう。
または、ウェビナー、イベント、セミナー、展示会に誘因し、面談の機会を作りましょう。
見込み客の連絡先を取得できたら、次は、
見込み客に自社を認めて頂き、信用して頂くために、コミュニケーションを重ねます。
お客様からの質問から、お客様が何を求めているのか、どうすれば満足度が高まるかを読み取り、
そのために役に立つ情報をお客様に、こちらから提供していきましょう。
(リードナーチャリングと呼びます)
購買意欲の高まっていない見込み客に、営業訪問をかけても、
警戒心を引き起こすだけで、お客様の信頼構築につながりません。
電話、メルマガ、チャットを中心にコミュニケーションを取り、
距離を近づけていきましょう。(インサイドセールスと言います)
リードナーチャリングで、購買意欲を高めたお客様に重点的にアプローチすることで、
効果の高い、効率的な営業活動を行うことができます。
お客様の購買意欲の確認には、MA(Marketing Automation)が活用できます。
見込み客のメール開封率や、サイトへのアクセスを集計することで、
購買意欲の高いお客様を抽出することができます。
営業は、お客様に商品を購買することにメリット、
購買しないことのデメリットを伝えるとともに、
購買にあたっての懸案を聞き出し、解消していきましょう。
また、購買の可能性が高いが、購買に踏み切れない見込み客に、
フォロー漏れがないように管理するためには
CRM:Customer Relationship Managementの構築も有効です。
大型商談では、支出も大きくなるため、お客様も慎重になりがちです。
信用獲得と、支払意志額の引き上げには、特殊な技術が要求されます。
そのために参考となるSPIN営業術を解説しましたので、
ご参照頂けると幸いです。
2.原理原則にしたがい、一貫性をもって取り組む
研究開発、ブランディング、社員教育といった中長期施策は、
会社のポジションを強化し、競合他社との競争を有利に進めるために、
必ず取り組まなくてはなりません。
しかし、効果が出るために時間がかかるため、
トライ・アンド・エラーで計画を修正することは不可能です。
間違いが許されない、中長期施策については、
原理原則にしたがった方針をたて、取り組むことを一度決めたら、
一貫性を持って取り組みつづけることが大切です。
中長期的な施策は、短期的には利益につながらないことも多く、
経営レベルが中心となって、強い意志をもって取り組まないと、
継続は困難でしょう。
中長期的施策で得られるものは、短期的に結果が出ないからこそ、
競合が模倣せず、差別化につながりやすい、と言えます。
(「「ばかな」と「なるほど」経営の決め手:吉原英樹著」にて分かりやすく解説されています)
誰もが認める知名度の高いブランドは、ブランド・エクイティとして、
資産価値を認められるほどの、大きな価値があります。
どの会社も、自社をブランド化したい、と考えているはずです。
しかし、ブランドを構築できている企業は、決して多くありません、
それは、ブランド構築が、中長期で効果がある施策だから、
取り組むのが難しい、ということが、理由として挙げられます。
中長期的施策で大切なことは、
長い期間にわたって継続できる、無理のない予算で取り組むことです。
最初に予算を大きく取っても、
結果が出ないからと言って、すぐに辞めてしまうようでは、
せっかく取り組んできた活動も、無駄になってしまいます。
成功するまであきらめない、結果が出るまでやり続けるという気持ちで、
根気よく取り組み続けることが大切です。
一か八かの勝負をするのではなく、
土俵の真ん中で相撲を取ることを心がけましょう。
〇「マーケティング志向のための7つの行動則」
・お客様/見込み客の立場で考え、適切にコミュニケーションする
〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の目的
マーケティングの基準軸を明確にすることで、創意工夫による、「需要の創造」「新商品の創造」「新技術の創造」「市場の創造」を促進する。
〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の意義
マーケティング志向を広めることで、企業の成果物を、適切な消費者にご採用いただくことを促進し、社会の進歩発展に貢献する
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