菱二私論

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社会の要望を捉えた事業の目的を定める(マーケティング目線で考える「事業の目的と意義」)

岡村匡倫
Posted by 岡村匡倫 on 3/17/20 9:54 AM

 

マーケティング志向のための7つの行動則の1項目となります。

 

[目次]

1.お客様のご要望に応えることが、事業の本質であると認識する

2.いまのお客様に感謝をして、さらなる要望に応える

3.既存分野以外の要望(課題)を集めつづける

4.新しく生まれる要望に応える。

5.事業の「目的と意義」を定める

 

 

 

1.お客様のご要望に応えることが、事業の本質であると認識する

 

購入とは、お客様がなんらかの要望を抱えているとき、それを解決するために発生する行動です。

(「要望」が「問題」「課題」という「要望の未達成」であることもあります。)

決して、機能や性能を求めて、購入しているわけではありません

 

要望-1

 

「要望」をもつ人は、お客様になってくださる可能性があります。

この、「要望」を持つ人が多ければ多いほど、多くのお客様が存在する、

つまり、大きな事業につながる可能性があります。

 

大きいビジネスと小さいビジネス

 

また、購入には、対価として金銭の支払いが発生します。

大きな要望であれば、大きな金額でも支払おうと考えますが、

要望が小さいにもかかわらず、大きな支払いが発生するようであれば、

お客様は購入を行わない、と判断するに違いありません。

 

つまり、要望、あるいは、問題が、大きければ大きいほど、

より金額の大きい事業になるということです。

 

価格-1

 

この2点をまとめますと、

要望(問題)を抱えている「人数」と、要望の「大きさ」の積、が

事業の大きさの潜在力になります。

事業の潜在力

叶えるのが、「多く」のお客様の、「大きな」要望であればあるほど、事業は大きくなります。

事業の成功を目指しても、自社のことばかりを考え、お客様のことが抜け落ちれば、

いくら頑張っても、事業は大きくなりません。

 

お客様のご要望に応える、お客様に貢献するという「お客様第一主義を貫く」ことは、

マーケティングにとって、最も大切なことと言っても、過言ではありません。

 

2.いまのお客様に感謝をして、さらなる要望に応える

「お客様の要望」を掘り下げるにあたり、まず、

いま現在、お仕事を頂いているお客様から、多くの気づきを得ることができます

ただし、そのためには、絶対に忘れてはいけないことがあります。

 

それは「お客様に感謝をする」ということです。

 

感謝

 

事業では、無理、無茶と思うような難題を突き付けられることもあります。

艱難辛苦を舐めながら、日夜重労働にあえいでも、微々たる利益しか積み重ねられない状況であれば、

さらに厳しい要求を突き付けられることに腹立ちを感じても致し方ないかもしれません。

 

しかし、そういった難題も、「お客様のご要望のひとつの現れ」であることを

思い出さなくてはなりません。

 

お客様の要求に応え、性能を伸ばす、コストを下げる、ということに一途に取り組み、

それが他社に追随できないレベルになれば、「差別化」「参入障壁」となり、

競合他社との競争に打ち勝つ、強力な武器になってくれます。

(競争戦略については、「お客様にとってのベストになる」をご紹介しています。)

 

さらに、お客様のご要望に対して、創意工夫で、全く新しい切り口を発見できれば、

自社の発展の基礎となることは間違いありません。

 

お客様の、無理、無茶、難題をありがたがることは、決して簡単ではありませんが、

乗り越えれば、それは自社の強み、かけがえのない宝になります。

 

お客様の言葉を蔑ろに扱っては、「気づき」を得ることができません。

お客様を尊敬、尊重する意識、つまり、「感謝の気持ち」を持ち、

艱難辛苦に立ち向かう気概が必要です。

 

課題に突き当たっても、苦難に遭遇しても、迷うことなく、精一杯、乗り越えていきましょう。

 

成長

 

ただし、お客様に感謝をするということは、

「損をしてでも、事業を続けなくてはならない」「お客様の言いなりになれ」

というわけではありません。

事業の継続のためには、絶対に利益を出さなくてはなりません

 

利益がなければ、それは事業ではなく、慈善です。

事業では、必ず利益を出さなくてはなりません。

 

厳しい価格競争にあって、赤字の商品を根絶することは難しいように思えますが、

得意なこと(コア・コンピタンス)を活かし、競合他社に負けない創意工夫に取り組めば、

値決めさえ間違えなければ、必ずや、利益は生み出されます。

(値決めは、マーケティングのための行動則「熟考して値決めする」をご紹介しています。)

 

持続可能な事業を通して、正々堂々と、お客様に貢献しましょう。

 

正々堂々としたビジネス

 

お客様に感謝をお伝えする、そして、気づきを頂くためには直接、お客様にお会いすることが一番です。

しかし、流通、卸を経由しているために、お客様と接する機会がない業界もあります。

 

そういった場合、「ファンイベント」「コミュニティ運営」を行うことも考えられます。

また、SNSを通して、お客様とコミュニケーションを取ること、

自社のことに言及してくれている方にお礼のメッセージを送る、といったことも、

現代では可能になっています。

 

SNSやレビューサイトを通したコミュニケーションでは、良い話だけでなく、

批判、厳しい意見、場合によっては、誹謗中傷といったネガティブな話もあるでしょう。

 

そういった厳しい話も、改善のためのヒントだと捉え、

真正面から真摯に受け止め、参考にすることが大切です

 

特に、ネット上のオープンなやりとりは、

直接やりとりをしているおひとりだけでなく、後ろに大勢の観客がいらっしゃると思い、

丁寧に行うよう、心がけましょう

 

 

ただし、定期的に、お客様の要望が、今後も続くかどうかを、定期的に問い直すことも必要です。

なぜなら、時代の変化とともに、突然、既存の要望が無くなることもあるからです。

 

例を挙げると、石炭の需要です。

石油の登場で、石炭の需要は大きく減りました。

今後、自然エネルギーの活用が進むと、石油の需要もなくなる可能性もあると言えます。

これから要望が無くなるであろう事業に注力し続けることは、危険が伴います。

 

事業の将来性を見ながら、どの事業に注力するのか、常に見直し続けましょう。

(クレイトン・クリステンセンは、イノベーションのジレンマにて、

破壊的イノベーションが既存事業を無価値にする可能性がある、と説いています)

 

3.既存分野以外の要望(課題)を集めつづける

社会に出て、多くの人の話を聞き、困りごとを集めると、

あるとき、それがヒントとなって、自社の製品と、意外な形で繋がるかもしれません。

 

もし、自社の製品の強みが貢献できる課題を発見できれば、商品の創造、市場の創造に繋がります。

いまのお客様の延長線上だけでなく、まったく関係のないと考えている世界にも目を向けてみましょう。

 

社会に目を向ける

 



マットレスを販売している株式会社エアウィーブは、

以前は「株式会社中部化学機械製作所」という化学機械メーカーで、

釣り糸や漁網を作る射出成型機を生産していたそうです。

 

社長である高岡本州氏が自動車事故で頸椎を痛めたときに、寝返りがつらかったことから、

体に優しいマットレスがあれば、身体を大切にしたい人も喜ぶと思い、商品開発に取り組んだそうです。

 

また、電子部品の素材であるセラミックの加工を行っていた京セラ株式会社は、

セラミックの耐摩耗性に着目し、釣り具のリールへの釣り具のリールに転用できないかと、

釣り具メーカーへの提案に取り組んだそうです。

 

さらに、セラミックを人体に移植した際の拒否反応の少なさにも注目し、

人工関節の開発しています。

 

現在、ポストイットを販売している3Mは、創業はサンドペーパーの製造です。

リチャード・ドルーという社員が、自動車の塗装で塗り分けを行う際に、

塗装工が苦労して、目止めのために、新聞紙を車体に張り付ける姿を見て

剥がしやすいテープがあれば、便利にちがいない」と思い、

サンドペーパーの糊を転用し、セロファンテープを開発しました

 

このテープの技術が核となり、さらにビデオテープ、医療用テープの開発に繋がっています。

 

このように、

既存とはまったく異なる業界でも、自社の技術が活躍できる方法が見つかることがあります。

社会の抱える課題の解決のため、自分たちが何かできないかを考え続けましょう。

 

4.新しく生まれる要望に応える。

要望は一定ではなく、時代に合わせて、生まれたり、消えたり、変わったりします。

 

たとえば、日本では高齢化現象に伴って、

「満足な介護を受けたい」「健康を維持したい」といった要望が強くなっています。

 

同じように、

地震が起こると「建物の耐震性が気になる」

台風が来ると「停電時はどうしよう」

疫病が発生すると「感染予防に気を付けないと」

といった要望が突発的に発生します。

 

また、技術革新も新たな要望を創り出します。

 

スマートフォンの誕生は、いつでも気軽に隙間時間でゲームをしたい、という要望を生みだしました。

これは、スマートフォン自体が存在しないときには、持ち得なかった要望です。

 

新しい要望が生まれたばかりの時には、応えられるサービスや商品は、まだ世界には存在しません。

つまり、競合他社の存在しない、理想的な市場、つまり、「ブルーオーシャンだといえます。

その要望にいち早く応えることで、ぜひ、新しい事業を興しましょう。

ブルーオーシャン

ただし、気を付けなければいけないこととして、

競合他社も常にブルーオーシャンを探している以上、「スピードが命」だということです。

 

キャッシュレスやインターネット回線、電気やガスの自由化のような、

規模拡大が原価低減に寄与するインフラビジネスは、早期の囲い込みが有利に働くため、

いかに早く陣地(市場シェア)を抑えるかが、勝負になります。

 

常に社会の変化に目を光らせ、誰よりも早く、要望に応えることで、

競争に巻き込まれる前にお客様と繋がっていきましょう。

 

新しく生まれてきた要望は、社会、お客様が、存在自体に気付いていないことがあります。

 

お客様が気づいている要望であれば、探しに来るのを「待つ」ことができますが、

お客様が気づいていない欲望であれば、お客様に気づいていただくための「啓蒙」、

つまり、顕在化させることから、取り組む必要があります。

 

そのため、コミュニケーションのあり方も変わってきます。

(法人営業における、潜在要望の顕在化については、SPIN営業術をご紹介しています。)

 

 

限られた需要を奪い合い、過当競争が続くと、企業の成長率は低くなり、不況が訪れるといわれています。

しかし、今まで意識されなかった要望の発見は、新しい需要を創出することができます。

「需要創出型のイノベーション」は、不況を切り開くために最も効果的な企業活動とも言えます。

 

もっと良い社会、もっと人々が幸せになれる社会を想像し、

そこに近づくために、なにができるかを、考えてみましょう。

 

新しい要望を探す

 

5.事業の「目的と意義」を定める

冒頭で申し上げた通り、事業の本質とは、お客様の要望に応えることです。

既存のお客様、社会の課題、時代の流れから、応えるべき、多くの要望を見出すことができますが、

自社が事業として取り組むにあたっては、

自社が「どのような要望に応えるか」ということを、

明確に決めなくてはなりません。

それが、事業の「目的」です。

 

マーケティングにおける事業の目的

では、どのように、事業の「目的」を決めればよいのでしょうか。

 

現在の日本は、多くの商品とサービスがあふれており、市場では激しい競争が繰り広げられています。

その競争のなかで、お客様に選んでもらうには、自社が競合他社よりも秀でている、

つまり、お客様にとってのベストでなくてはなりません

 

しかし、並み居る競合他社のなかで、自社がベストになることは、簡単なことではありません。

少しでも有利に事業を進めるために、できるだけ飛び石を打つことを避け、

「得意なこと(コア・コンピタンス)」をベースに、事業を展開するのが望ましいと言えます。

 

しかし、いくら自社が得意なことに積極的に取り組んだとしても、

お客様が存在しないようであれば、事業として成り立ちません。

 

これを避けるために、

お客様にどれぐらい喜んでいただけるのか、

喜んでくださるお客様がどれぐらいいるのか、

ということを調べる必要があります。

 

このことは、

お客様の要望の「大きさ」と「人数」を調べるということ、

つまり、冒頭に申し上げた、「事業の潜在力」を調べることと、

同意義になります。

 

これを事業の「意義」と呼びます。

 

大きな「意義」のある事業に取り組むことは、潜在力の高い事業に取り組むことだと言えます。

意義のある高邁な目的を定め、さらに自社の独自性があれば、間違いなく、大きな成功を収めることができます。

 

事業の潜在力2

■ 事業の「目的」を決める効用は、3つあります。

 

1.事業の成功率が高まる

「目的」を定めず事業を広げると、自社が勝てる可能性の低い、戦略性の欠けた事業になる危険性があります。

「目的」を定めることで、自社が得意なことを中核に据えることができ、事業の成功率を高めることができます。

また、新商品を開発した際にも、商品群としての既存事業とのシナジーが発生します。

 

2.自社の強みが伸びる

方向を定め、努力と投資を重ねれば、時間を経るごとに、実力と経験が積み重なっていきます。

その蓄積が「他社ではできない」レベルまで高めることができれば、

それが「差別化」「参入障壁」となり、社業の進歩発展に大きく寄与してくれます。

「得意なこと」に磨きをかけるためには、事業の「目的」を明確化し、掲げることが大切です。

 

3.新商品、創意工夫のアイデアが出やすくなる

商品、サービス内容といった「手法/技術」は、

お客様の要望に応えるという「目的」を実現するための方法であり、

時代に合わせて変えても、問題ありません。

ぶれない「目的」を定めることで、

それ以外の「手法/技術」を自由に変えても良い、と区別できるので、

固定概念にとらわれず、より柔軟に、自由に発想することができるようになります

 

 

 

■ 事業の「意義」を確認する効用は、2つあります。

 

1.事業の潜在力を確認できる

お客様が確実に存在する事業に進出することができます。

事業の「意義」が広ければ広いほど、深ければ深いほど、大きな事業になる可能性を秘めています。

 

2.社内の協力を得られる

事業に取り組むにあたり、すぐ結果を得られるとは限りません。

艱難辛苦を乗り越えるためは、社内の全員が一致団結する必要があります。

そのためには、全員が奮い立つような「高邁な意義」が必要です。

目的を価値あるものにするためには、目的の「意義」を明確にし、共有しましょう。

 

 

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〇「マーケティング志向のための7つの行動則」

 ・社会の要望を捉えた事業の目的を定める

 理念を貫く

 ・お客様/見込み客の立場で考え、適切にコミュニケーションする

 ・お客様にとってのベストになる

 ・熟考して値決めする

 ・極小の経費で売り上げを極大にする

 ・常に明るく前向きに、夢と希望をもって、挑戦する

 

〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の目的

マーケティングの基準軸を明確にすることで、創意工夫による、「需要の創造」「新商品の創造」「新技術の創造」「市場の創造」を促進する。

 

〇 「マーケティング志向のための7つの行動則」の意義

マーケティング志向を広めることで、企業の成果物を、適切な消費者にご採用いただくことを促進し、社会の進歩発展に貢献する

Topics: マーケティング, 7つの行動則