日本は、モノづくり大国です。
工場における製造工程を「分析」し、課題を「発見」し、
改善を繰り返し、品質と効率を高め続け、
「メイド・イン・ジャパン」は、世界に冠たるブランドになりました。
では、同じアプローチで、営業も、効率化できないのでしょうか。
[参考記事]
信頼を後押しとして、顧客が自ら買いたくなる、スムーズなマーケティング活動の記事はこちらです。
→顧客に寄り添い、顧客との信頼関係を築く「インバウンドマーケティング」とは
ものづくりは、「コントロールされた環境」で、同じ作業を「繰り返し」ます。
つまり、工程上に課題があれば、同じトラブルが、「繰り返し」発生します。
そのため、トラブルを発見しやすく、さらに課題も発見しやすい、と言えます。
また、対策を講じたときの、変更前と変更後の変化も、容易に比較できます。
それに対し、営業活動は、お客様という「外部要因」に大きく左右されます。
全く同じ営業活動というものは、ただひとつ、ありません。
そのため、営業活動上で課題があっても
原因の特定ができず、改善に取り組むことが困難です。
その結果、
営業活動は、センス、適性といった個人的要素の影響が大きい、と捉えられ、
営業スキルの向上の話題は、個人の「話術」「心の姿勢」に終始してきました。
しかし、近年、営業活動を改善するために、
営業活動を、数量ベースで分析することで、
ベストプラクティスを見つけようとするアプローチが生まれています。
その分析に用いる、ひとつのフレームを提示するのが、
今回、取り上げる『The Model』です。
営業活動を、フレームにはめ込み、可視化、数値化することで、
結果の分析、課題の発見、そして、営業活動の改善を可能にします。
当書籍の著者である福田 康隆氏は
Sales Force 日本法人の立ち上げに携わったのち、
Marketo 日本法人の初代社長に就任しています。
(※ 2020/10現在は、ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社の代表取締役社長)
マーケテックを代表する2社に関わった経歴を活かし、
当該書籍では、最新のウェブテックも、紹介されています。
新しい技術を知る点で、参考になるのではないかと思います。
[目次]
3.SFA、CRM、SFA導入で感じたこと(自社での取り組み、私論)
1.マルケトの考える「営業の科学」とは
1.1.The Modelとは
営業プロセスモデルのひとつです。
見込み客が、購買に至るまでのフェーズを
・ニーズを持つ人(Market)
・自社に興味を持つ人(Inbound Lead)
・見込み客(Qualified Lead)
・顧客(Closed)
・再購買に繋がる顧客(Customer Retention)
と分類します。
そして、営業活動を「見込み客の段階を移行させる活動」と定義します。
言ってみれば、工場で、原材料を加工し、完成品に仕上げるイメージです。
営業活動という「作業」と、
フェーズ移行という「結果」を結びつけることで
求める「結果」を効率的に引き出すために、
どのような「作業」が適切かを、分析します。
また、営業活動の分業化を行うことで、
フェーズごとの見込み客数をカウントすることができるようになると
売上が不調な時にも、どの活動に問題があるかを、判別することができます。
たとえば、
・Inbound Leadが不足している
→自社に興味を持つ人が少ない
・Qualified Leadは足りているが、Closedが少ない
→見込み客が顧客になる確度が低い
・Closedは足りているが、Customer Retentionが少ない
→顧客がリピーターになる確率が低い
・Customer Retentionはできているが、Closedが少ない
→新規活動が不足している
といった具合です。
1.2.営業活動を改善する3つの取り組み
一つ目は、「営業活動の分業化」です。
営業活動を分業化すると、
繰り返しが増え、専門性が高まり、効率が上がります。
また、全般の習得より、部分の習得のほうが、必要な時間が短いため
新規採用人材の則戦力化が期待できます。
二つめは、「お客様情報の共有」です。
お客様の要望に応える、そして、さらに、満足度を向上させるためには、
お客様が何を考えているのかを、理解する必要があります。
つまり、「お客様の情報」が重要になります。
企業にとって大切な、「お客様情報」も、
営業活動が属人化していると、情報は個人に散逸してしまい、
企業として、共有、保管、管理できません。
そして、営業担当の異動、退職で、情報は消え去ってしまいます。
そんな事態を避けるため、情報共有のインフラが必要と説いています。
三つめは、「失注客のリサイクル」です。
見込み客との商談が、たとえ、成約に至らなくても、
もし、タイミングが合わなかったことが不成立の理由であれば、
時間がたてば、再び、成約のチャンスがやってきます。
つまり、成約数を増やすためには、
新しい見込み客を増やすだけでなく、
成約に至らなかった見込み客をつなぎ留めることも、
重要だと、説いています。
とはいえ、成約に至らなかった見込み客を、
営業担当がフォローし続けることも、大変、労力がかかります。
いつ、アクティブになるか分からない見込み客を繋ぎとめるためには、
メルマガ、ブログ、情報誌といった「情報提供ツール」が重要と説いています。
1.3.営業効率化に貢献するツール(SFA、CRM、MA)
前述した
・ 営業の分業化
・ お客様情報の共有
・ 失注客のリサイクル
を行うためのシステムが、
・ SFA(Sales Force Automation )
・ CRM(Customer Relationship Management)
・ MA(Marketing Automation)
です。
SFAとは、商談の進展状況を管理するシステムです。
商談の詳細情報をデーターベースで管理することで、
案件ごとのきめ細やかなフォローを可能にするとともに、
営業活動の課題を抽出することができます。
CRMとは、顧客情報のデータベースです。
顧客の氏名、住所といった情報だけでなく、過去のお取引の履歴、
面談内容、メール、電話といったコミュニケーションなど、
ありとあらゆる情報を登録することで、多面的な分析を可能にします。
MAとは、顧客がWEB上でとる行動を検知するシステムです。
見込み客の、情報に対しての反応を分析することで、
どの見込み客の購買意欲が高いのか、検知することができます。
さらに、メール送付、営業担当への通知といった処理を
自動的に行うことも可能です。
2.The Modelの解説と要約
書籍の要約を資料にまとめました。
ご希望の方は、ダウンロードページから、
資料をご覧になってください。
3.SFA、CRM、SFA導入で感じたこと(自社での取り組み、私論)
3.1.ツールを入れるだけでは、効果がない
この書籍の最後の「おわりに」にて、
人類の最大の強みは、「道具を使えること」だと
書かれています。
つまり、「SFA、SCM、SFA」を活用すれば
営業活動は、まだまだ効率化できると、強調されています。
しかし、当然ですが、ツールの導入には費用がかかります。
さらに、ツールを使いこなすためには、教育と学習が必要になります。
労力に見合った成果を手に入れるためには、結果に結び付けなくてはなりません。
弊社でも、CRM、SFA、MAを導入しておりますが、
実稼働と呼べる状態に辿り着くまでに、かなりの時間と労力がかかりました。
まず、既存顧客をCRMに登録する必要があります。
このとき、既存顧客を手作業で登録すると、莫大な時間がかかるとともに、
入力のブレ(半角 or 全角)(カタカナ or 英語)といった個人差が発生し、
整合性のとれたデータベースになりません。
また、MAを使って、WEBアクセスを分析しようとしても、
そもそも、WEBサイトへのアクセス数が少ないと、
まったく効果はありません。
さらに、SFA、MAは、オートメーションと銘打ちつつも、
ワークフロー設計は、人間が行う必要があります。
見込み客の行動から、見込み客の思考を読み取るセンスが求められます。
また、案件をSFAに登録し、さらに、逐次、状況を更新する
あるいは、入手したお客様情報を、CRMに登録するのは、
現場の営業担当の方に、お願いしなくてはなりません。
業務で多忙な営業に、入力の手間を取ってもらうことは、
決して簡単ではありません。
「オートメーション」というキャッチーな名前に惹かれ、
とりあえず、導入したとしても、簡単に活用できるツールではありません。
3.2.ツールが必要な企業、不要な企業
わたしは、SFA、CRM、MAといったツールが
マッチする企業と、マッチしない企業があると考えています。
その基準は、「営業活動の比重」の大きさです。
SFA、CRM、MAといったツールは、営業活動の改善が目的です。
企業活動全体の中で、営業活動の割合が高い企業であればあるほど、
営業活動の改善の必然性、効果は大きいと言えます。
では、営業活動の比重が高い業界とは、
どのような営業活動でしょうか?
それは、
・扱う商品が複雑
・扱う商品の単価が高い or 総額が大きい
・購入の検討から決定までの期間が長い
・リピートオーダーがあり、お客様と長いお付き合いになる
といったことが挙げられます。
※ そういった営業の力量が求められる大型商談の改善について、
書かせて頂いた記事はこちらです。
→法人営業(BtoB)に役立つ経営書『大型商談を成約に導くSPIN営業術』のまとめ
総じて、BtoCより、BtoBが、マッチしゃすい、と言えそうです。
また、ツール導入にあたっては、
営業プロセス自体を見直すことになるため
全社で取り組んでいく必要があります。
経営トップレベルが、営業プロセス改善を
ビジネス課題として考えている企業であることが、
ツール導入を成功させる必要条件ということも、言えそうです。
3.3.導入にあたって大切なこと
営業プロセスの改善が、ツールを入れる目的です。
それが逆転して、ツールを入れることが目的になってしまうと
導入は、必ず失敗します。
まず、自社の営業効率の改善するために、
ツールが本当に効果的なのかを見極める。
そして、ツール導入が有効であると判断できたときは、
「ツール導入 → 営業活動の改善 → 事業の発展」
という一連の流れを、関係者全員の共通目標としたうえで、
全社一丸で取り組むことが大切です。
なぜなら、ツール導入の目的が
「営業の監視、管理」と捉えられてしまうと
拒否反応が起き、協力を得られなくなるからです。
それを避けるためにも、
「営業の監視、管理のため」ではなく、
「営業を支援する」という導入の意義を前面に押し出し、
ツール導入を進めることが大切です。
より効率的な営業活動ができれば、
利益率が良くなり、事業を発展させることができます。
この記事が、読まれた方の事業発展の一助となれば、幸いです。
〇 営業効率化についての参考リンク
営業活動のムリムダムラを取り除くことで、営業活動を効率的にアップデートする記事はこちらです。
→営業業務のムリムダムラを除き、効率を高め、成長を加速させる「フリクションレスホイール」とは
信頼を後押しとして、顧客が自ら買いたくなる、スムーズなマーケティング活動の記事はこちらです。
→顧客に寄り添い、顧客との信頼関係を築く「インバウンドマーケティング」とは
名刺管理と顧客管理の統合についての記事はこちらです。
〇「経営書を読む」の一覧
・生産性改善に役立つ『ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か』
・ウィズコロナの不安を乗り越えるための書籍『森田療法:岩井寛著』
・コロナ不況下の経営に役立つ『不況に克つ12の知恵:松下幸之助著』のまとめ
・感性的な悩みをしない考え方「オプティミストはなぜ成功するか」のまとめ
〇「経営書を読む」の目的
素晴らしい書籍の存在をお伝えし、興味を持ってもらう(そして、書籍本文を読んでもらう)
著者が提唱する、経営理論、マーケティング理論の概略を知ってもらう。(そして、抱えている問題の解決を手伝う)
〇「経営書を読む」を記す意義
投稿を読まれた方が、新しい知識を手に入れるきっかけを作ることで、問題解決の糸口を探すお手伝いをする。
素晴らしい書籍が読まれる機会を増やすことで、社会の進歩発展に貢献する
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