売上を伸ばすには、新規顧客の開拓が必要です。広告を投下する、営業コールをかける、飛び込み営業を掛ける、提案数を増やす、といった活動に取り組まれているのではないでしょうか。しかし、費用をかけて広告を打つにせよ、労力をかけて営業活動を行うにせよ、非効率が残っている状態では、せっかくの投資が、無駄になってしまいます。
経営においては、費用対効果も重要な要素です。そして、投下費用を最大限に活かすためには、ムリ・ムダ・ムラを無くすことが、大切です。そのことを分かりやすく表現したのが、今回お伝えする「フリクションレスホイール」です。
フリクションレスホイールは、グローバルにおけるMAトップシェアを誇るHubspot社が提唱する「インバウンドマーケティング」のイメージ図です。フリクションレスホイールの理解は、信頼を後押しとして、顧客が自ら買いたくなる、スムーズなマーケティング活動を実現するために重要だと、考えています。
信頼を後押しとした、顧客が自ら買いたくなるスムーズなマーケティング活動についての記事はこちらです。
→顧客に寄り添い、顧客との信頼関係を築く「インバウンドマーケティング」とは
[目次]
1.AIDMAの問題点と、それに代わるモデル(フリクションレスホイールとは)
3.2.見込み客と接触する(あるいは、見込み客からの接触を受ける)
3.4.見込み客が求めていることを解決する最善の方法をアドバイスする
1.AIDMAの問題点と、それに代わるモデル(フリクションレスホイールとは)
ユーザーの消費行動を体系的に分析するために考えられたモデルとしては、AIDMAが最も有名です。購買に近づくと、顧客数が絞られる点から「ファネル(漏斗)」と呼ばれたり、水が上から流れる様子に似ていることから「デマンドウォーターフォール」と呼ばれます。
漏斗では、上部に水を入れると、全て下に流れていきますが、実際には、上部の認知(Attention)から、下部の購入(Action)に流れる顧客は、ほんのごく一部です。つまり、認知から購入に至る段階で漏れてしまった見込み客の獲得は、無駄になってしまうということです。
また、ネット社会の到来で、購入した顧客の満足度は、口コミ、レビュー、紹介を媒介して、新たな顧客を引き付ける、重要な要素になっています。しかし、 ファネルモデルでは、購入後の顧客の満足度による、新しい購買への影響は、考慮されていません。
それらの課題を考慮して、マーケティングオートメーションにおけるグローバルシェアトップであるHubspot社が、新しく考案したモデルが、フリクションレスホイールです。
車輪には、Atract(惹きつける)、Engage(結びつく)、Delight(喜ぶ)という3つの要素が配置されています。お客様が、商品に魅力を感じ、商品の購入に進み、商品を手に取って喜ぶという、一連の流れを表しています。さらに、お客様の喜びは、新たなお客様のAttract(惹きつける)へと繋がっていきます。
車輪の回転は、顧客の増加、事業の成長を意味しています。お客様に喜んで頂くことで回転力を与えることに加え、お客様に喜んで頂くための障害を取り除くことで回転の抵抗を減らすことが重要です。
車輪は回り始めると、慣性力がつき、簡単に止まらなくなります。ビジネスも、同じように、顧客満足が新しい顧客を引き寄せるようになると、順調な成長を続けていきます。(ジム・コリンズがビジョナリーカンパニーで提唱している「弾み車」に着想を得たモデルだと思われます)
2.営業活動の抵抗となる「ムリ・ムダ・ムラ」を減らすために
営業活動には、ムリ・ムダ・ムラが潜んでいます。
それらを取り除くために、
・Enable
・Align
・Transform
の3フェーズがあります。
2.1.営業活動のムダを無くす(Enable)
日報、月報といった報告書作成の時間を減らすために、CRMを活用しましょう。また、MAを活用することで、購買意志の無い傍観者を避け、購買意欲の高いお客様だけを抽出することができます。業務への集中力を高めるためにも、優先業務を明確にすることができるSFAの活用も、効果的です。
※ CRM、MA、SFAの活用については、下記の記事も参考になります。
→営業活動を科学する『The Model(ザ・モデル)』のまとめ
2.2.営業活動のムリを無くす(Align)
営業の仕事は、商品を売ることです。しかし、買う、買わない、を決めるのは、お客様ご自身です。お客様の信頼を勝ち取ることこそが、結果的には、商品を売るための最短の近道になります。
そのためには、コミュニケーションの中心を、営業本意の「売ろう」という考えから、お客様本位の「買いたい」という気持ちに、移すことが大切です。つまり、営業の目標を、「自社商品を売ろう」ではなく、「お客様の課題を解決する」に設定することで、お客様と営業の目標を一致させることが大切になります。これをカスタマーサクセスと呼びます。まずは、「お客様が何を求めているのか」「どういった課題を解決したいのか」ということを探り出したのちに、その解決方法を、お客様と一緒に、探していきましょう。
目の前のお客様と、どのようなコミュニケーションを行うべきか、という考察には、バイヤーズジャーニーを用います。
お客様が、
1.Awareness:自分の課題を、明確化したい
2.Consider:どの解決法が、自分の課題の解決にもっとも適切か、判断したい
3.Decision:解決法を実現するために、だれから購入するか、決定したい
の3段階のいずれにあるのかを判断し、お客様のフェーズに合わせた、適切な情報提供を心がけるようにしましょう。
Decisionフェーズに入ってから、お客様と繋がりを構築するようでは、他社との差別化ができません。できるだけ早い段階で信頼関係を構築することが重要です。 Awarenessフェーズ、あるいは、Considerフェーズの見込み客が求める情報を積極的に提供していきましょう。
Awarenessフェーズ、Considerフェーズで、信頼関係が構築できていれば、Decisionフェーズで、自社が、見込み客にとっての最善の解決方を提供できる、最も信頼できるパートナーであることを伝えることで、 高い確率で、受注を獲得できるはずです。
営業担当に問い合わせることに、逡巡する見込み客も少なからずいらっしゃいます。お客様ご自身が、必要な情報を探し出せるよう、企業サイトに掲載する情報を充実させる、自動で質問に答えてくれるチャットボットを設置する、分かりやすい価格表を開示する、競合製品との比較表を掲載する、といった施策も、有効な手段です。
2.3.営業活動のムラを無くす(Transform)
営業は、人の活動です。
システムとツールを整備し、プロセスを構築するだけでは、営業全員が、正しい営業活動を営むことはできません。より良い営業活動を行えるよう、ひとりひとりに合ったコーチングが必要です。そのためには、営業プロセスの可視化、可測定化して、現状の営業活動に潜む課題を発見していきましょう。
※ 営業プロセスの可視化、可測定化には、SFAが効果的です。詳しくは、営業活動を科学する『The Model(ザ・モデル)』のまとめにて、記載しております。
コーチングには、GROWモデルを用います。
G:Goal(具体的な数値目標と、期限を決める)
R:Reality(現実との目標の差異を確認する)
O:Option(差異を埋める方法を探す)
W:Wayforward(実績を測定し、目標への到達を後押しする)
大切なことは、コーチではなく 、営業本人が、目標を決める、という点です。自分自身が目標を決めることで初めて、責任感と積極性をもって、改善に取り組むことができるようになります。
コーチングは、
・1対1の面談:本人が抱える課題を聞き出し、相手に寄り添う姿勢で、アドバイスする
・グループミーティング:活動を振り返り、成功事例の共有、あるいは、失敗事例へのアドバイスを、全員参加で行う
・パイプラインミーティング(案件管理):現在抱えている案件に目を通し、隠れた課題を炙りだす
の3つの形式を、組み合わせて、行います。
コーチングを通して、全員が、お互いに学びあう、ひとりひとりが自然に成長する文化が醸成できれば、お客様に、よりよい体験を提供することができるようになり、ビジネスは成長を続けていきます。それが、フリクションレスホイールの考え方です。
3.フリクションレスホイールに基づいた営業活動とは
見込み客は、営業を通して、企業の姿勢、商品の根底を流れる思想を、読み取ります。言うまでもありませんが、営業は、企業の顔として、正しいメッセージを体現し続ける必要があります。
営業活動は、
1.(有望な)見込み客を抽出する
2.見込み客と接触する(あるいは、見込み客からの接触を受ける)
3.見込み客が本当に求めていることを探る
4.見込み客が求めていることを解決する方法をアドバイスする
の流れで表すことができます。
3.1.(有望な)見込み客を抽出する
見込み客から、購買に至る可能性の高い、有望な見込み客を抽出します。新聞、テレビ、インターネット等から得られる情報に加え、CRMに蓄えられた情報を参考に、優先順位をつけていきましょう。購入に至る可能性の低い見込み客への営業は、見込み客、自社、いずれにとっても、時間の無駄になります。
3.2.見込み客と接触する(あるいは、見込み客からの接触を受ける)
見込み客は、自分の望むタイミングで、情報を入手したいと考えています。見込み客からの接触があれば、できるだけ早く、応答するようにしましょう。また、こちらから見込み客に接触する場合には、正しい相手に接触できているのかを、常に意識しましょう。特に、大型商談になると、使用者、発注者、決裁者といったように、関係者が増えていきます。キーマンを見極めて、営業を行いましょう。
※ 関係者の増えがちな大型商談を成約するための方法について、記載した記事も掲載させて頂いております
→法人営業(BtoB)に役立つ経営書『大型商談を成約に導くSPIN営業術』のまとめ
3.3.見込み客が本当に求めていることを探る
営業活動のリサーチのフレームワークとして、BANT(Budget、Authority、Necessity、Timeline)が有名ですが、そもそも、見込み客が求めている商品を、自社が提供できないようであれば、BANTを確認しても、意味はありません。
また、見込み客からの問い合わせを頂くと、営業としては、すぐに商品を提案したくなりがちです。しかし、見込み客が、本当は何を求めているのかを理解しないと、正しいアドバイスは行えません。ここは、落ち着き、見込み客が本当に求めていることを探るようにしましょう。
3.4.見込み客が求めていることを解決する最善の方法をアドバイスする
このステップで、営業は、見込み客おひとりおひとりにカスタマイズされた情報提供を、心がけましょう。一般的な情報は、営業に聞かなくても、インターネットを通して、入手することができます。見込み客が求めるのは、自分に合わせた最適な情報です。営業の役割は、見込み客が必要とする独自の情報を、オーダーメイドで届けることです。
このステップで、自社の商品がお役に立てない(つまり、購買に至る可能性が低い)と判明した時には、率直に、そのことを伝えるべきです。なぜなら、購買に至らない見込み客に、営業を行うことは、見込み客、自社、いずれにとっても、無駄な時間だ
からです。
もし、自社が、見込み客の課題を解決できるようであれば、自社が、見込み客にとって、最適なパートナーであることを、併せて、伝えましょう。これまでのコミュニケーションを通して、営業と見込み客が、解決策を一緒に探すことで、信頼を構築することができていれば、メッセージを前向きに受け止めて頂くことができ、自然に受注を勝ち取ることができるはずです。
[参考記事]
信頼を後押しとした、顧客が自ら買いたくなるスムーズなマーケティング活動の記事はこちらです。
→顧客に寄り添い、顧客との信頼関係を築く「インバウンドマーケティング」とは
システムを活用した営業支援について書かれた「The Model」の要約記事はこちらです。
→セールス活動を科学する『The Model(ザ・モデル)』のまとめ(ザ・モデルとは)
名刺管理と顧客管理の統合についての記事はこちらです。
[参考資料]
今回、経営コンサルティングを行っている株式会社ブリングアップ様から、営業活動に関してのチェックシートをご共有頂きました。
営業課員のコーチングのために参考となる資料です。下記リンクからダウンロードできます。
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