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感性的な悩みをしない考え方「オプティミストはなぜ成功するか」の要約

岡村匡倫
Posted by 岡村匡倫 on Jul 22, 2022 11:57:54 AM

 

ポジティブシンキングの効用は、色々なところで説かれていますが、しかし、性格とは持ち前のもので、変えようと思っても、なかなか変えられない、とお考えの方は多いはずです。また、過度なポジティブシンキングが引き起こす、無計画な猪突猛進、他責的、わがまま、自分勝手で、無反省の姿勢を思うと、本当にポジティブであることがよいのか、といった不安も感じます。

 

そういった疑問に、明快な答えを提示してくれる書籍が、「オプティミストはなぜ成功するか」です。表題はよくある自己啓発書のようですが、著者のマーティン・セリグマンは、アメリカ最古で最大の心理学会のAPAの会長を担う心理学者であり、当書籍も、実証実験と心理学に裏付けされた学術的書籍です。

 

世界第二次大戦以降、アメリカで増え続けるうつ病に危機を感じた著者が研究した「うつ病とは何か」「要因を取り除くにはどうすればよいのか」という内容が、一般人にも分かるように、簡潔に書かれています。

 

先の見えない時代において、不安から逃れることは困難です。しかし、恐怖に怯えたままでは心労に押しつぶされ、下を向いてばかりではチャンスを見逃します。この書籍は、企業経営者、マーケター、商品開発者といった中長期的展望を求められる職種にとって、非常に有意義な内容になっています。

 

※ マーケティングにおいて、常に明るく前向きでいることが大切であることを解説した記事はこちらです。

   →「常に明るく、前向きに、夢と希望をもって、挑戦する(マーケティング志向とは)

 

「オプティミストはなぜ成功するか」の要約、まとめ

「うつ状態」とは

失敗の受け止め方は、オプティミスト(楽観主義者)とペシミスト(悲観主義者)で全く異なる。

 オプティミスト:失敗は「一時的」「特定の」現象と捉え、原因を「外向的」に考える

 ペシミスト  :失敗は「永続的」「一般的な」現象と捉え、原因を「内向的」に考える

 

「失敗」という現象に遭遇した時、オプティミストは、次回は成功するだろうと考え、行動を続ける。

しかし、ペシミストは、次回も失敗するだろうと考え、無力感に囚われて、行動をやめてしまう。

この「無力感に囚われ、行動をやめた状態」が行きつくと、「うつ」になる。(学習性無力感

 

オプティミストの効用

うつ状態に陥ると、集中力が低下する、外的対象に興味が薄れる、生理的欲求が弱くなる、身体的に不調をきたす、といった現象が起こり、極度の生産性低下を引き起こす。「うつ」に陥らないことは、生産性を落とさないためにも、極めて重要である。

特に、正しい活動を行っていたとしても、一定の確立で失敗が発生する職種(車の販売員、保険の営業)では、高い能力を持っていたとしても、ペシミストであるだけで、無力感に囚われやすく、結果を残すことは難しい。

さらに、オプティミストは総じて、ペシミストに比べ、新しいことに前向きに取り組む意欲、自己免疫力が高い傾向にある。オプティミストであることは、生産性を高めることに大きく寄与する。

 

オプティミストの危険性

オプティミストは、現実を自分に都合よく解釈してゆがめるという一面を持っている。そのため、ミスが許されない業務(経理、会計、アイム、安全技師)においては、必ずしも良いとは言えない。また、失敗を過小評価することで、将来の危機をも過小評価する危険性があるため、中長期的な判断を必要とする経営ボードにおいても、ペシミストが必要になることもある。

 

オプティミストになるための方法(ABC方式)

オプティミストとペシミストの違いは、「失敗」の受け止め方である(説明スタイル)。つまり、失敗を、「一時的」「特定」の現象で、原因を「外向的」と受け止める方法を身につけることで、オプティミストに変わることができる。そのための訓練が「ABC方式」である。

 

人間は、困った状況(A)に直面すると、それについて考えをめぐらす。考えは、すぐに思い込み(B)となって固まる。この思い込み(B)はあまりに習慣的になっていて、自分では気づかないことも多い。思い込みは結果(C)を生む。

A:Adversity(困った状況)

B:Belef(思い込み)

C:Consequence(結果)

困った状況(A)に遭遇したとき、悲観的な思い込み(B)があれば、落胆してあきらめる(C)傾向が高まり、楽観的な思い込み(B)があれば、建設的な行動をとれる(C)傾向が高まる。

 

改善に向けて、まず最初は、自分の困った状況に遭遇した時の、自分自身の思い込み(B)を分析する。もし、悲観的な思い込み(B)があれば、その思い込み(B)を楽観的に変えていくために、反論(D)と元気づけ(E)を行う。

D:Disputation(反論)

E:Energization(元気づけ)

オプティミストのABCDEを、繰り返しトレーニングすれば、オプティミストと同じ、説明スタイルを身につく。

 

柔軟な楽観主義の勧め

楽観主義は、自分の定めた目標を達成するための便利な道具でしかない。悲観的な見方が正しい時には、それに耐えなければならない。やみくもな楽観主義ではなく、現実を認識した、バランスの良い「柔軟な楽観主義」こそが重要である。

 

 

全文要約

全章について、講義レジュメ形式に、重要なキーワードを抽出しました。

全体像、詳細な内容を知りたい方は、下記のリンクからダウンロードしてください。

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私論(説明スタイル、受け止め方、解釈力についての考察)

感性的な悩みをしない

「オプティミストはなぜ成功するか」では、失敗を前向きに受け止める説明スタイルが登場します。

同じ考え方を、多くの先人が説いています。たとえば、稲盛和夫師の「感性的な悩みをしない」「常に明るく前向きに夢を希望を抱いて素直な心で」という言葉、カントの「悟性」、田坂広志先生の「絶対肯定の想念」、吉村思風先生の「解釈力」といった概念などが挙げられます。また、困難に負けないで挑戦を続けるために、オプティミスティックであることが重要である、という考えは、最近の話題になった「GRIT(やりぬく力)」にも通じる内容です。より良く生きるために、感情に惑わされないことは、古今東西に相通ずる、重要な課題と言えるのかもしれません。

 

 

説明スタイルの応用で、慎重さ、謙虚さを得る

人間誰しも、悪いことが起これば、悪い気分になります。そのとき、オプティミストであれば、悪い気分を引きずらず、前向きに気持ちを切り替えて、次の挑戦に向かうことができます。説明スタイルを身に着けることで、困難に折れない、しなやかさ、強靭さを手に入れることができます。

逆も、また然りです。

人間誰しもが、良いことが起これば、良い気分になります。そのとき、全能感に支配され、そのまま突き進めば、いつかは痛い目に合います。成功したからと言っても驕り高ぶらず、冷静に己を振り返り、日々反省を行うことで、慎重さと謙虚さを得る子ができれば、取り返しのつかないような、大きな失敗から逃れることができます。

同様に、説明スタイルは、「貪り」「怒り」「妬み」「ひがみ」「驕り昂ぶり」「疑い」「不信」といったネガティブな感情に働きかけることができ、謙虚で、穏やかな生き方を見つける手助けになるのではないかと思います。

 

正しい判断とは

失敗の後に、次こそ良いことが起こるはずと思えば、元気が湧き、さらに挑戦に突き進めるようになります。一方、失敗したからには、次も悪いことが起こるはずと思えば、意志は沈着し、慎重に物事を進めるようになります。つまり、説明スタイルを変えると、行動も変容する、ということになります。

これは逆に考えると、説明スタイル次第で、判断が、簡単に変わってしまうということです。恐ろしいことです。では、正しい判断とは何なのでしょうか?

 

その問いに対する答えの、ひとつは、稲盛和夫師の説く「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という考え方です。

構想を膨らませるためには、不可能ともいえるような高い目標を追い求める楽観が求められます。次に、計画を立てる段階では、様々な落とし穴を予測し、対策を立てていかなくてはなりません。そのためには、悲観的ともいえるほど、厳しい姿勢で、起こりうる問題点を、見つけ出す姿勢が求められます。最後に、実行段階になった時には、成功を信じて疑わず、感性的な悩みをせず、実現に向かって突き進む楽観的ともいえる勢いが必要です。楽観と悲観の両極端を、混乱させず、分かりやすく、両立させるために、稲盛和夫師は「構想、計画、実行」の3段階に、それぞれ、楽観と悲観を割り当て、とことん突き詰める必要性を説かれています

 

もう一つの答えは、「自分自身がどう生きたいか」という信念です。

判断の成否は、未来の結果において、決定されます。つまり、事前の段階では、成功するのか、否かを悩み続けても、答えは、いつまでも出ません。逆説的に考えると、先が見えないがゆえに、どこかで「自分がどうありたいか」をベースに判断せざるを得ません。

目的地が定まっていない状態で、壁を乗り越える力となる「楽観」を身につけても、逆に、迷い、惑いが深まってしまいます。何があっても実現したいと思う信念があればこそ、壁にぶつかった時に、楽観が救いになります。

信念を実現するは、その人にとっての生きがい、幸せであり、そして、楽観は、信念の実現に立ちふさがる困難を乗り越えるための、強い味となります。つまり、信念があればこそ、楽観は強い味方になってくれる、と私は考えます。

 

 

※ マーケティングにおいて、常に明るく前向きでいることが大切であることを解説した記事はこちらです。

→「常に明るく、前向きに、夢と希望をもって、挑戦する(マーケティング志向とは)

 

 

〇「経営書を読む」の一覧

・法人営業に役立つ『大型商談を成約に導くSPIN営業術』

・生産性改善に役立つ『ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か』

・ウィズコロナの不安を乗り越えるための書籍『森田療法:岩井寛著』

・コロナ不況下の経営に役立つ『不況に克つ12の知恵:松下幸之助著』のまとめ

・営業活動を科学する『The Model(ザ・モデル)』のまとめ

 

〇「経営書を読む」の目的

素晴らしい書籍の存在をお伝えし、興味を持ってもらう(そして、書籍本文を読んでもらう)

著者が提唱する、経営理論、マーケティング理論の概略を知ってもらう。(そして、抱えている問題の解決を手伝う)

 

〇「経営書を読む」を記す意義

投稿を読まれた方が、新しい知識を手に入れるきっかけを作ることで、問題解決の糸口を探すお手伝いをする。

素晴らしい書籍が読まれる機会を増やすことで、社会の進歩発展に貢献する

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