○そもそも「解像度」ってなんだ?
解像度は「像をどれだけ解けられるかの度合い」...どれだけ細かく再現できるかを表す数字です。
単位は「dpi」。
dpi = dot per inch、つまり1インチ(25.4mm)あたりに何個のドットがあるかを表しています。
「解像度の数字が大きい方が、細かいところまで再現できる」と言えます。
解像度の高い印刷「高精細」について、説明した記事はこちらです↓
○スキャナが読み込める細かさは、カタログの「光学解像度」を見ればわかります
今回ドラムスキャナと比較に使ったのはDS-G20000。光学解像度は2400dpiです。当社でも、フィルム原稿や反射原稿のデータ化に使用することもあります。ちなみに、DS-G20000、透過ユニット込みで40万円ぐらいするんですが、カタログ上の光学解像度では、実売7万円ぐらいのGT-X980(6400dpi)に負けていますね。
○では、なぜGT-X980を使わないのか?
最終的に得られる画像の解像度は、センサーの性能以外に光学系、ピントや駆動系の精度の影響を受けます。スキャナのドライバで指定する解像度は「この数値でスキャナが動作する」ことを表していて、スキャニングされた画像の実際の解像度を保証するものではありません。
デジタルカメラで写真を撮るとき、
・同じ画素数でも、センサーサイズで差が出る
・同じ画素数、同じセンサーサイズ(カメラ)でも、「高いレンズと安いレンズ」で差が出る
・同じ画素数、同じカメラ(センサーサイズ)、同じレンズでも、撮る人の腕前(ピントやハレ切り)で差が出る
のは、感覚的にご理解頂けるかと思います。
民生用のA4スキャナのカタログスペックを実際に調べた論文などを読む限り、カタログ上の光学解像度はあまり信用できないことがわかります。(古い文献なので、現行機種は改善しているかもしれませんが…)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/photogrst1964/68/Suppliment2/68_Suppliment2_5/_pdf
○スキャナの「正味の解像度」ってどうやって調べるの?
白と黒の線の組み合わせがだんだん細かくなる「解像力チャート」というフィルムを実際にスキャニングして、チャートが判別できなくなるところを調べます。(健康診断で行う視力検査のようなものです)
これは私たちが普段使っている解像力チャートです。フィルムベースで高解像度対応のものは、国内で見つけられなかったので、海外からお取り寄せしています。
○ドラムスキャナとフラットベットスキャナで、実際に撮り比べてみました
論より証拠、さっそくドラムスキャナとフラットベットスキャナを撮り比べていきます。
DS-G20000のカタログ上の光学解像度は2400×4800dpiなので、ドラムスキャンも2400dpiで設定しました。
気になる結果は以下の通り。
さすがドラムスキャナ。2299dpiでも、きっちり解像できています。いい仕事しています。対してDS-G20000は、1825dpiの段階で、解像できていません。全体的に、コントラストも低下しています。動作の精度に加えて、光学系でハレーションや迷光が起きているのかもしれません。
ドライバの設定が2400dpiでも得られるデータの解像度はそうとは限らないことがわかりますね。とはいえ、ドライバの設定解像度に対して実際の解像度が半分ほどしかない機種もある中、DS-G20000は民生用のフラットベットスキャナとしては非常に健闘しています。カタログで「リアル2400dpi」を謳うだけのことはあります。
○では、フィルムの解像度はどれぐらいなのか?
フィルムをスキャニングするにあたっては、スキャニング対象となるフィルムの解像度が、スキャンできる解像度の上限となります。では、フィルムの解像度は、どれぐらいなのでしょうか?
フィルムの性能を示すデータシートに、「MTF曲線」というデータがあります。下のグラフは富士フィルムのVelvia100のMTF曲線です。
横軸は空間周波数(右に行くほど細かい線)の変化、縦軸はレスポンス「線がどれだけシャープに再現できるか」の変化を表しています。レスポンスは100%を切ると線が徐々にボヤけたように見えていきます。「白と黒の線がどの段階で解像しなくなった(ぼやけた)」とするかは人それぞれで、このあたりが「フィルムをデジタル化する時の最適な入力解像度は何dpiか?」論争をややこしくしています。
例えば
レスポンス100%以上を「解像している」とすると、サンプリング定理によりこの時に必要な解像度は1524dpi
となり、
レスポンス70%以上を「解像している」とすると、サンプリング定理によりこの時に必要な解像度は3048dpi
となります。
[ 根拠数式 ]
例えばレスポンス100%以上を「解像している」とする時、
空間周波数は15cycle/mm(381cycle/inch)。
1cycle(白と黒の線)を2dot(画素)で表すとして
その時のフィルムの解像度は381cycle/inch×2dot=762dpi。
サンプリング定理によりこの時に必要な解像度は1524dpiとなります。
レスポンス70%以上を「解像している」とする時、
空間周波数は30cycle/mm(762cycle/inch)。
1cycle(白と黒の線)を2dot(画素)で表すとして
その時のフィルムの解像度は762cycle/inch×2dot=1524dpi。
サンプリング定理によりこの時に必要な解像度は3048dpiとなります。
レスポンス70%以上を「解像している」とすると、フィルム自体は3000dpi程度の解像度を持っていると言えますが、実際には「レンズの性能」「撮影技術(ピント・ブレ・ハレ切り)」などの影響を受けるので、フィルムの性能を100%引き出す撮影は相当難しく「フィルムに写る像」の解像度は、これほど高くはありません。
○スキャン解像度は、どれだけあれば、十分と言えるのか?
結論から言えば「原稿の持つ解像度×2以上の解像度」が原稿の持つ情報を記録するのに必要なスキャン解像度です。
フィルムを原稿とする場合は、フィルム自体の他に、撮影時のフィルムの平面性・レンズの光学解像度・撮影技術などの要素によって変化するので、一概にはできず、明確な答えを断言できません。
ちなみに当社では「2000dpiあれば、ほとんどの場合で必要十分」とお客様にお伝えしています。
今回のコラムでは、同じ解像度で読み込んでも「スキャナ自体の性能差」で得られるデータの質も変わる。というお話をしました。フィルムのデータ化の際には「どの解像度でスキャニングするか」も大切ですが、「どの機材でスキャニングするか」も、それ以上に大切です。
弊社は、日本でも数少なくなったドラムスキャナを今でも保有し、現役で稼働しております。
ドラムスキャナについて、ご興味のある方は、下記の記事もご覧になってください。
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