はじめまして
岡村印刷工業でスキャニング業務を担当している田中です。
このコラムでは
・私が普段使っているいろいろなスキャナの紹介
・取り扱う色々な原稿や材料、技術にまつわる話
・デジタル化の事例の紹介などを執筆していこうと思っています。
コラムを通して、私たちのスキャニングに対する想いや姿勢を感じていただけると嬉しいです。
よろしくお付き合いください。今回は初回なので、まずは自己紹介から。
私、今や希少な経歴の持ち主です
「入社以来30年近くずっとスキャナ業務一筋で現役」という、印刷業界では今や希少な経歴の持ち主です。
スキャナ愛がガチすぎて、DTPオペレーターとしては必須の、illustratorやInDesignは、ほぼ使えません。
私が入社した頃、スキャニング業務は印刷業界の花形でした
普段私たちが目にするポスターやカタログ、美術書には、いろいろな写真が印刷されています。
今ではほとんどがデジタルカメラで撮影されていますが、私が入社した頃はフィルムカメラが主役。
印刷で写真を使うためには、まず最初にフィルムをスキャナでデータ化する必要がありました。
デジタルデータと違い、オリジナルのフィルムは世の中に1枚しかありません。
スキャニング業務は、そんな「大切な原稿」を直接触る慎重さと、印刷品質を決める色彩感覚が要求される印刷の中でも重要な仕事でした。
花形から一転、絶滅危惧職種へ
入社して10年ほどは大量のフィルムのスキャニングに追われて、毎日午前様な過酷な勤務が続きます。
電機メーカーや自動車メーカーの新商品のカタログやポスター・有名な写真家や画家の作品集など…
しんどかったですが、自分が携わった印刷物を、街や本屋さんで見かけると、ちょっと誇らしい気持ちになったものです。
ところが2000年代はじめにデジタルカメラが出現すると、フィルムを使った撮影は急速に減り、その結果スキャナの仕事も減っていきます。
仕事の減少とともに、仲間も1人減り、2人減り…ついに社内でスキャナ業務に就いているのは私一人だけに。
社内でも「スキャナはあと数年でなくなる」とまで言われる状態に。
「このままスキャナは絶滅するのか」とも思いましたが、
この頃からフィルムをデジタル化して保存・活用する、いわゆる「デジタルアーカイブ」の仕事が増えていきます。
現在のスキャナ業務
今では印刷原稿のスキャニングはほぼなくなり、業務のほとんどをデジタルアーカイブ用のスキャニングが占めています。
仕事の内容の変化に合わせて、
掛軸や襖、屏風など、最大2m角の原稿をデータ化できる大型のスキャナや、赤外線や紫外線蛍光でデータ化できるスキャナなど、当社で保有する設備もアーカイブに特化した特殊なものが増えています。
たとえば、昨年、完了した高松塚古墳壁画(国宝)の修復作業における作業記録のスキャニングは、弊社が引き受けておりました。石材の重量は数トンを超え、また、破損を避けるためにも壁画にスキャン面を接触させることができなかったため、メーカーと打ち合わせを行い、オリジナルの非接触大型スキャナの開発しました。11年間にわたる大プロジェクトでしたが、国宝というかけがえのない文化財にたずさわる、本当にありがたいお仕事だったと感じています。
最後に
「文化財」という言葉があります。「文化」+「財」で文化財。
「文化」とは「私たちが築いた有形・無形の成果」、「財」とは「お宝・価値のあるもの」という意味です。
皆さんは文化財といえば何を想像しますか?
国宝?重要文化財?狩野派?応挙?雪舟?
もちろんこれらは誰もが認める「成果」で「お宝」ですが、それだけが文化財ではありません。
企業が長年撮りためたフィルムや資料・地域の古い写真や古文書・個人が撮った家族の写真…
「のこす価値がある」と誰かが思うものは、その単位で見れば「文化」であり「お宝」だと思います。
デジタルアーカイブはこれらの文化財を「デジタル化」し「活用」しようというものです。
資料のデジタル化を通じて、私たちの技術が皆さんのデジタルアーカイブ構築の一役を担えるなら、こんなに嬉しいことはありません。
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