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昼間も映える灯明、多度大社様「献灯祭」のみあかり

岡村匡倫
Posted by 岡村匡倫 on Sep 13, 2023 9:48:49 AM

2000灯以上もの灯明「みあかり」が夜の境内に幻想的に浮かび上がる、多度大社様(三重県桑名市)の夏祭り「献灯祭」が8月11、12両日に営まれました。従来は「ちょうちん祭り」として広く知られてきましたが、コロナ禍による休止を経て4年ぶりに祭りを再開するのに合わせ、今回、名称も灯明も一新して執り行われました。その新たな「みあかり」を当社で作らせていただきましたので、ご紹介いたします。

 

お祭り一新へ、みあかり新調

多度山の南麓にご鎮座される多度大社様。献灯祭では、深い森に囲まれた境内をみあかりの神秘の光が彩り、4万5千人もの参詣者で賑わいました。これまでのちょうちん祭りではその名の通り、伝統的なスタイルのちょうちんを灯明に使われてきました。しかし、新生のお祭りとしてスタートするのに当たり、「参詣される方に、視覚的にも『変わった』との印象を持っていただきたい」(同社権祢宜、日紫喜康史さま)と考えられたのが、みあかりを新調するきっかけとなりました。

また、ちょうちんの製作をこれまで依頼してきた職人さんが廃業するなど、今後のちょうちんの入手に課題が出てきたという事情もあったといわれます。

 

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以前の「ちょうちん祭り」では紅白のちょうちんを吊るされていた

 

みあかり新調に向け、いろいろと検討されるなか、目を留められたのが、当社のブログ「明治神宮の百年を彩る奉祝献灯、『夢鈴(ゆめりん) 』のご紹介」です。令和2(2020)年の明治神宮鎮座百年祭では、当社で作らせていただいた紙行燈「夢鈴」3500灯が、奉祝の灯りとして参道に並べられました。これをご覧になり「伝統を今の形に置き直していて、斬新でした」(日紫喜さま)とご評価いただき、当社にご相談されたのです。

 

円筒形のデザインを創案

夢鈴は、内照式の電飾看板などに使っている「ピーチコート」という半透明の合成紙に、絵柄を耐久性に優れたUVインキでオフセット印刷して制作したものです。みあかりの場合、献灯祭の2日間だけでなく、その前後含め3週間ほど吊るし続けられますから、より耐光性が高い溶剤インクジェット印刷を提案しました。オフセット印刷に比べ単価は上がるものの、数年にわたって使えるため、結果的にコストは抑えられます。(なお、献灯祭の後に大型の台風7号が襲来しましたが、みあかりに被害がなかったことからも、強い風雨にも耐えられる丈夫な構造であると言えそうです)

形については、円錐や三角錐も候補でしたが、高い場所に吊るすと、下から側面の絵柄や文字が見えにくくなります。当社からも提案させていただいて、最終的に決められたのが円筒形です。従来のちょうちんとは違う新しさがありながら、伝統的な趣も備えた形となります。

 

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新しさと伝統性を兼ね備えた円筒形のみあかり

 

省スペースで保管可能に

 

円筒形は別のメリットももたらします。献灯祭が終わると、みあかりは翌年に向けて保管されますが、従来のちょうちんですと、たたんでも一定のかさがあり、保管箱が倉庫の大きな面積を占めました。一方、新しいみあかりの構造は、端に3つないし4つのボタンを取り付け、それを留めることで円筒形にしています。保管の際は、ボタンを外して平らなシートにして重ねられるため、保管スペースが「ちょうちんのときの20分の1になりました」と日紫喜さまは言われます。

 

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端のボタンを留めれば円筒形になる

 

また、献灯者の名入れについては、剥離可能な名前シールを貼り付ける形を提案させていただきました。以前は大変な労力をかけて、名前を一つ一つちょうちんに筆書きされていました。しかも、翌年以降の献灯も見越して全数保管され、保管スペースは拡大の一途でした。

 

新しいみあかりは名前シールを剥がして保管し、翌年は献灯者台帳に基づいて新たに印刷した名前シールを貼ればよくなっています。以前に献灯された方のちょうちんを再度掲げるため、膨大な数の中から探し出すという手間もなくなりました。

 

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名入れにはシールを利用

 

映える色彩で新イメージ

以前のちょうちんに使われていた既存の配線と電球を使って、みあかりの設営は行われました。

 

当社の印刷技術で作ったみあかりが、お祭りの新たなイメージにつながったといわれるのが、そのきれいな色合いです。紫、緑、青、赤、橙と5色で境内をさわやかに彩り、紅白のちょうちんと比較して落ち着いた雰囲気が漂い、その色合いもよく映えるため、夜だけでなく日中にも参詣されて、写真を撮ったりする人も増えたそうです。

「夜に灯を入れたときの柔らかい光の美しさだけでなく、昼間もとりどりの色の美しさがあります。日中から夜間まで参詣していただけるお祭りとなりました」と日紫喜さまは仰り、喜ばれています。

 

 

昼と夜で違う趣に

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本殿前(昼)

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本殿前(夕)

 

 

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手水舎前(昼)

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手水舎前(夜)

 

あかりの調製では、日本の良き伝統を最新の印刷技術で受け継がせていただくことができ、大変ありがたく思っております。これからもさまざまなジャンルで、挑戦を続けてまいります。

「みあかり」について、ご興味のある方は、こちらからお問い合わせください。

Topics: 印刷技術, 加工技術, 事例紹介