限定生産、みなさんお好きですか?
買い物をしていて「残り7個」とか「本日限定」とか書かれた商品があるとつい手に取ってしまいますよね。
私も最近「本日限り」につられてモバイルバッテリーを買ったのですが、後日サイトを覗いてみたら「本日限り」と同じ値段で売られていてちょっとがっかりしたばかりです。
さて、今日は版画の世界の限定品の証、「エディション」のお話です。
そもそも「版画」ってなに?
石版画用の大理石
銅版画用プレス機
版画とは、文字通り、「版によって刷られた画(絵)」のことです。私たちの会社ではリトグラフ(平版印刷)・エッチング(凹版印刷)などの古典的な版画技法から、ミストグラフ(デジタル印刷)まで色々な印刷方式で版画を製作しています。他にも木版画(凸版印刷)、シルクスクリーン(孔版印刷)と、いろいろな印刷方式があります。
・(銅版画、石版画)車木工房について
→https://www.okamura-pic.co.jp/company/bunka.html
・(デジタル印刷)ミストグラフについて
→https://www.okamura-pic.co.jp/lp/mist/
1点ものの直筆画と違い、印刷なので複数枚同じ作品を作ることができることが特徴です。
版画のエディションってなに?
ポスターやカタログといった印刷物に比べ、版画は手間暇や時間をかけて製作されます。しかし技術的には「印刷物」であることに変わりはありません。印刷は「同じものを大量に作る技術」なので、版がつぶれない限りは何枚でも製作が可能です。
しかし、無限に作ってしまうと価値が低くなるので、版画を制作する場合は、最初に製作部数を決めておくことが一般的です。この製作部数が「エディション」です。
エディションには通し番号が割り振られ、例えば「10/100」のように分数で記載されることが多いでます。番号は直接用紙に記入したり、番号が記載された題箋や証明書、プレートが添付されたりします。
ちなみに所定の製作部数を刷り終わると、版そのものは破壊され、データは消去されます。2度と使うこともない版やデータをを持っていてもしょうがないし、版やデータを破壊してしまえばそれ以上の枚数の版画が世に出ることもありません。
エディション番号は誰が書いているの?
作品にサインを入れる作家さんは、サインの時についでにご自身でエディション番号を書かれることが多いです。
私たち現場のスタッフが番号を入れることもありますが、いつもちょっと緊張しながら入れています。字が上手すぎてもダメだし、下手すぎてもダメ。ヘタウマな感じで数字を書くのって難しいです。
番号じゃなくって記号が入っていることも...
版画の使用目的に応じて「A.P」「P.P」「H.C」「T.P」などの記号を入れることもあります。
「A.P」...作家さんが手元に置いておいたり、贈答用に使用したりする時に使うプリント。私たちは「A.P」を使うことが多いですが「E.A」と書かれていることもあります。「Artist Proof」「Epreuve d’artiste(フランス語)」の略。
「P.P」...私たち製作者が作家さんからいただいたり、資料として持っておく用のプリント。「Printer’s Proof」の略。
「H.C」...商談や見本で使うときに使うプリント。「非売品」とか「展示用」みたいな感じ。「Hors Commerce(フランス語)」の略。
「T.P」...試し刷りや資料として保管用のプリント。「Trial Proof」の略。あまり使いません。
これらの記号を使う場合でも複数枚作る場合は「H.C 1/10」のようにエディション番号が入ることがあります。アニメの複製原画では「0」番号が関係者配布用として使われることも多いです。
同じ作品でもエディション番号によって価値は変わるの?
作り手側としてはどの作品も同じクオリティで製作しているので品質面では変わりません。
と言っても、若い番号やキリ番・ゾロ目とかが当たるとちょっと得した気分になりますよね。
「A.P」「P.P」「H.C」「T.P」や「0:ゼロ」は関係者以外は手に入れることはできませんし、1~10番やキリ番・ゾロ目は作家さんが「おつかいもの用」として取っておくことも多いので、作品を購入される人にとっては特別感があるかもしれませんね。
今回は版画のエディションの話でした。
ちなみに、わたしは、「H.C」が何の略だったか、いつまでたっても覚えらません。
(「Hors Commerce」...なんて読むんだろう。)
文化財、美術品、イラスト、コミックの原画複製に活用される、岡村印刷がご提供する高品質インクジェット出力「ミストグラフ」の記事はこちらです。
Leave Comment