菱二私論

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コロナ不況下の経営に役立つ『不況に克つ12の知恵:松下幸之助著』のまとめ

岡村匡倫
Posted by 岡村匡倫 on 7/13/20 4:17 PM

 

経営書を読む」シリーズです。

 

新型コロナウィルスの経済への影響は、留まるところを知りません。

観光業界、飲食業界はもとより、製造業にも影響は広がりつつあります。

 

経営者にとって、不況はつらい環境ではありますが、

経営の神様とも呼ばれる松下幸之助氏は、

「好況よし、不況さらによし」という言葉を残されています。

松下幸之助氏は1917年に松下電子工業(現パナソニック)を創業されて、

1989年に亡くなるまでの約70年間の間に、多くの不況を乗り越えています。

 

列挙すると、

1923年の関東大震災

1930年には世界恐慌に誘発された昭和恐慌

1939年から45年の第二次世界大戦と、戦後のハイパーインフレーション、

その後しばらく好況が続きますが、

1973年には為替レートの変動相場制への移行による輸出企業への大打撃、

1985年からのバブル崩壊

と、10年に一度は、大きな不況に見舞われています。

 

松下幸之助氏が亡くなってからも、2008年にはリーマンショックが起き、

そして、2020年にコロナショックが発生していることを見ると、

10年に一度は、大きな不況が起きるといっても過言ではありません。

つまり、企業は、不況を前提として、経営に取り組む必要があると言えます。

 

2020年6月に、緊急事態宣言は解除されましたが、

潜在感染者が原因となって、クラスターが再発する可能性を考えると、

治療法が確立する、あるいは、ウィルスが完全根絶されるまでは、

不特定多数の人が大勢集まること、だれもが自由に活動することは、

暫くの間、難しいと思われます。

つまり、この不況は長期化することを、覚悟しなければなりません。

 

そんな厳しい状況において、この「不況に克つ12の知恵」は、

経営者の心構え、取り組むべきことを、分かりやすく記しており、

今、まさに、読むべき本と言えます。

 

1.不況に克つ12の知恵

 

この書籍は、書下ろしではありません。

松下幸之助氏の過去の著書から、不況に関する発言を抜粋して、作られています。

 

発言は、12項目に集約されているので、

目次を読むだけでも、おおまかな主旨を汲むことができます。

 

1.腹をくくる

2.志を変えない

3.策は無限にある

4.今は大躍進の絶好のチャンス

5.好況よし、不況さらによし

6.不況時こそ人材育成の好機

7.一服して英気を養う

8.不況は天然現象ではない

9.責任はわれにあり

10.己を知る

11.衆知を集めた全員経営

12.治に居て乱を忘れず

 

2.抜粋

 

素晴らしいお話ばかりですが、個人的に印象に残った言葉を抜粋させて頂きました。

 

大暴風雨にちょっとも濡れんといくようなうまい方法はない。だから多少は濡れていこうやないか。こう、腹をくくらないと仕方がない。そうすると、ちょっとぐらい濡れても、ちょっとぐらい損をしても、「ああそうか、まあいいやないか」という調子でいけますわな。そうすると、晩のおかずも、あんまりまずくない、ふつうの味がする。こういうことになります。それが、そういうように腹をくくらんことには、もうしゃくにさわってしかたがない。見るもの聞くものみなしゃくにさわる。こうなっていまいりますから、なかなかいい知恵が出ません。そういうように度胸を据えて、そしてそういう観点からみていくというようにやらないかん、ということを私は自分に言い聞かしているわけです

最後が、「自分に言い聞かしているわけです」と締めくくられているのを見ると、

松下幸之助氏ほどの人であっても、腹をくくることは、簡単ではないのだ、と驚きました。

 

平常の場合は、命を惜しみ、物を惜しみ、金を惜しむということも大切だと思う。しかし非常の場合、一大難局に直面したというようなときは、そういう心持では、かえってそれらを失うことになることが多い。非常に際しては、貴重な物であり金であり命であるが、これを失うこともやむをえない、むしろ進んで捨てるというような覚悟を一面にもってことにあたることが大切だと思う。そういった覚悟でやれば、十失うべきところを五ですむとか、あるいはまったく失うことなく、かえって成果を上げるということもある

コロナ禍では、徹底的な安全確保や、新規ビジネスに向けての果敢なチャレンジが必要ですが、

そういったとき、躊躇することなく、全力で取り組む必要を感じました。

 

人事は尽くしても、天命を待つことを知らない。そういう傾向を、私は現代に見ます。これだけやったのだから、これだけ報われなければならない、という考え方です。それも当然のことでしょうが、しかしそこに、悩み、争いが生じる大きな原因があるのではないでしょうか。あなたのこれからには、さまざまな困難があるに違いない。しかし、どんなときでも志を失うことなく、私心にとらわれず、あなたの可能なかぎりの努力をしてほしい。そして、次の事態を静かに待つ。期待通りに行くこともあり、期待に背かれることもあるでしょう。それはあなたの力を超えたものの働きだと思います。どのような力が働こうと慌てることはありません。あなたはできるだけのことはした、そうして待つとき、必ずつぎの新しい道が、自然とひらけるのではないでしょうか

ひとは結果を求めて、行動するわけですが、では、失敗の可能性が高ければ、行動しないほうが良いのでしょうか?

結果の如何にかかわらず、わたしたちは、自分がやれるやりつくす、足掻き続ける「覚悟」が大切だ、ということです。

「期待に背かれたとしても、新しい道がひらける」とは、禅問答のようですが、非常に深い話だと思います。

 

不景気であればあるほど、なすべき仕事がある。景気が非常に良いときには、景気が良いということから、新しい仕事を考える余地がない。だから、現在の忙しい仕事を遂行するだけにとどまってしまう。けれども不景気であれば考える余地があるし、また考えねばならないということになりますから、無限というほど新しい仕事、新しい方策、そういうものが考えられる。そしてそれに取り組んでいかなければならない、ということになろうかと思うんです。

この機会は常にできなかったことができる時期である。また、やらねばならん時期であると考えていいと思うんであります

この言葉を聞くと、じっとしていられなくなります。

 

私はこの人間の社会というものは、本質的に息詰まるということはないと考えています。つまり、大昔から人類は何百年と生き続けて、だんだん発展してきている。決して行きづまって終わったりしていません。ですから、今後もそのとおりで、いろいろ現実の問題として苦労がありたいへんだけれども、結局は、それぞれに道を求めてやっていけると信じています。もちろん、実際にはそれは決して容易なことではないと思いますが、しかし、少なくとも経営者として激動の時代に対処していくには、そのような信念を基本にもっていることが必要ではないかという気がするのです。

「信念」とは、理論や根拠を積み上げるように、石橋をたたいて導くものではなく、

自分が、信じるか、否か、ということなのかもしれません。

松下幸之助氏の成功を、「楽観の信念」が支えてきたことが、垣間見れます。

 

今この商売あかんから、こっちをまた一つ増やせと。そうするとその商売はよけいあきませんで。知恵がここから抜け出てくるんやから。知恵があってもうまくいかんのに、そこから一つの知恵をまた抜いたら、よけい弱体になってうまくいかないと思いますね。そういうときには遊ぶことですな。何もしない。

ひまになって、人を遊ばせておくのはもったいないという考えはそれなりに一理あるようですが、人件費の損失もさることながら、うろたえて、要らざることに手を広げた場合には、往々にして取り返しのつかない損失をこうむる結果になってしまうわけです。

商店の主人が、自分の店の価値というものを正しく判断しない場合は、おおむね失敗します。隣の家が店を改造した、たくさんの人をおいた、だからおれのところもやってやろうと、こういうように考える場合もありましょうが、しかしそれだけでは失敗する場合が多いと思うのであります

努力するとしても、なんでも飛びつく危険性にも警鐘を鳴らす、大切な箴言だと思います。

新しい道を探すには、自分自身を今一度、見つめなおすことが大切だと思います。

 

世間全体の不景気というものについても、”なすべきことをしていれば、それによって影響される事柄は、ほんとうはないのであって、それだけ大きな影響を受けるということは、その状態をやはり会社自体、あるいはお互い自身がつくっているからです”と解釈すべきでしょう

何かうまく行かないことがあった時、あとからよく考えてみますと、”あのとき、こういうことをしておけばよかったのに”とか、”ああいうことはやる必要のなかったことだった”とかいったことが、次々と出てくるものです。深く反省することによってそういうことに気がつくかつかないか。そのことが企業を順調に発展していくかどうかに大きくかかわっていると思います。

環境のせいではなく、自分のせいであると思うことが、自分を高め続ける、道を拓くためには、大切だということを感じます。

 

日ごろから勤めてみなの声を聞き、また従業員が自由にものを言いやすい空気を作っておくということである。そういうことが日常的にできていれば、事にあたって経営者が一人で判断しても、その判断の中にはすでに皆の周知が生きているといえよう。また、経営者みずからが衆知を集めてものを考え、仕事をしていくということも大切だが、それとともに、できるだけ仕事を任せて部下の人々の自主性を生かすようにしていくことも、衆知を活かす一つの行き方である。

衆知を集めるといっても、自分の自主性というか主体性はしっかりともっていなくてはならないということである。こちらの人の考えを聞き、”それは、そうだな” と思い、また別の人から違う意見を聞かされて ”それも、そうだ” というように、聞くたびにフラフラ揺れ動いているというようなことでは、聞いただけマイナスということにもなりかねない。あくまで自分の主体性をもちつつ、他の人の言葉に素直に耳を傾けていく、いいかえれば、経営者としての主座というものをしっかり保ちつつ衆知を集めていくところに、ほんとうに衆知が生きてくるのである。」

衆知を集めるということを、字面ではなく、本質で語られた言葉だと感じます。

 

3.私論

 

先行きが見えない苦境に陥るのは、経営者にとっては、まさに悪夢です。

しかし、愚痴っても、怒っても、慌てても、状況はなにも変わりません。

自分で何とかするしかありません。

しかし、不安に押しつぶされていると、

前向きな気持ちで、創造的なアイデアを生み出すことは困難です。

 

ですから、まず、必要になるのが、

1.腹をくくる

ということになります。

 

雨が降っているときには、濡れることを悔やんでも仕方ありません。

ある程度、濡れることを覚悟して、歩いていくしかありません。

 

前向きに取り組むだけで成功するほど、現実は、都合の良いものではありません。

しかし、前向きに、真剣に取り組めば、必ず「何か」が残ります。

前向きに、真剣に取り組むことは、決して、絶対に、無駄にはなりません。

 

※ 現状を受け入れることが、不安を乗り越える第一歩です。

  その具体的な方法として、精神療法の一つである森田療法を解説した記事

  書いております。ご興味のある方は、ご覧いただけると幸いです。

 

冷静さを取り戻したら、さらに、

2.志を変えない

ことで、事業の意義を再認識し、前向きなエネルギーを蓄えることが大切です。

そのように、心の体制を整えれば、次は、具体的な方策を考える段階です。

 

ところで、松下幸之助氏は、「責任は我にあり」とおっしゃっています。

もちろん、コロナウィルスを広げたのは、自分ではありません。

では、なぜ、「責任は我にあり」と思わなくてはならないのでしょうか。

 

いま、やるべきことは、「なにをすればよいのか」を発見することです。

もし、ここで「責任は他人のせいである、環境のせいである」となると、

「だから仕方がない」という結論で終わってしまいます。

それでは、何の解決にもなりません。

 

問題と真正面から対峙することで、はじめて、何かを発見することができます。

ですから、

8.責任は我にあり

9.不況は自然現象ではない

と考え、環境に原因を求めないことが大切だと言えます

 

また、新しいことを始めようとするときに、

自分の実力を大きく超えた、無謀な挑戦にならないように

10.己を知る

ことを戒められています。

そして、自分自身を見つめなおすことこそが、

自分自身の中に眠っている進歩発展の種を探すことになります。

 

ところで、経営者だけで、できることには、限界があります。

経営者だけが責任を抱え込み、状況に悩み続けても、問題は解決できません。

全従業員で力を合わせ、危機を乗り越えていかなくてはなりません。

 

ですから

11.衆知を集めた全員経営

が、大切になります。

 

しかし、コロナ不況で不安なのは、経営者だけではありません。

従業員全員も、みな、現状に不安を感じているはずです。

経営者が暗い顔をすれば、余計な不安が広がるだけです。

まず、全従業員を安心させなくてはなりません。

そのためには

4.今は大躍進の絶好のチャンス

と信じ、みんなを鼓舞し、全員の気持ちを前向きに切り替えることこそが

経営者の役目だと言えるのかもしれません。


一人では思いつかないことも、全従業員で探せば、発見できるかもしれません。

それが、

3.策は無限にある

ということであり、道を開くことに繋がるはずです。

 

コロナ不況の特徴は、消費者の価値観を変化させたことです。

つまり、「需要の落ち込み」ではなく、「需要の消失」ということです。

不況の対策では、不十分かもしれません。

 

しかし、それでも、本質は同じことです。

やらなくてはならないことに、変わりはありません。

 

現状を受け入れ、腹をくくり、自分に何ができるのかということを、

全従業員とともに、考えつくし、取り組んでいきましょう。

 

もし現状に悩まれている方がいらっしゃったら、

この記事がなにか役に立てば幸いです。

 

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ウィズコロナの不安を乗り越えるための書籍『森田療法:岩井寛著』

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