©アンシャントマン
近頃は、企業の広告やブランディングに、マンガ表現を使うことが珍しくありません。マンガそのものでなくても、愛らしいキャラクターが登場するカタログやDMなど、身の回りの印刷物にマンガが溢れています。
今回ご紹介するのは、南海電気鉄道株式会社さま制作のオリジナル漫画、「南海電鉄 時空アドベンチャー めざせ!天空の聖地 高野山」です。当社は企画のご提案から完成まで、制作会社も含めた共同作業に関わってきました。
マンガでわかる南海電鉄いまむかし!
(南海電鉄 時空アドベンチャー めざせ!天空の聖地 高野山)
→http://www.nankai.co.jp/traffic/branding-comic.html
・マンガ制作の目的
南海電気鉄道株式会社さまでは、「南海グループ経営ビジョン2027」で掲げる「満足と感動の提供を通じて、選ばれる沿線、選ばれる企業グループとなる」の実現に向け、南海ブランドの価値向上に取り組んでおられます。今回のオリジナルマンガ制作は、沿線の子供たちに、幼い頃から地域の歴史や魅力に親しんでもらい、誇りや愛情を醸成して「選ばれる沿線」となる、ことを目的としています。
→ニュースリリース、漫画冊子「めざせ!天空の聖地 高野山」を制作、小学校に配布
・仕様
A5判冊子 表紙含め32頁、マンガ本編28頁
・配布先
沿線自治体の小学校
・対象学年
小学校高学年
・ストーリー
時は西暦2120年。時空物語研究員、吉川七海に与えられたミッションは、「19世紀にできた鉄道会社と高野山の関係を調査せよ!」。七海はタイムワープで過去へ飛び、真言宗の聖地・高野山と、開山の祖・空海について取材を重ねる。庶民から戦国武将まで幅広い信仰を集める高野山だが、長い間、険しい山道が人々を遠ざけていた。鉄道会社との関係を調べるため、19世紀に飛んだ七海が見たものは…沿線住民に支えられ、線路の延伸工事を進める鉄道マンの姿だった。
「たくさんの人を高野山に運びたい」
使命感に燃える彼らは、30年の歳月をかけ、山頂までの全線を開通させたのだった。
担当者インタビュー
>そもそも、どのような経緯でこのマンガ制作の企画は始まったのですか?
2018年のことですが、ご縁があって、南海電気鉄道本社のブランドを統括する部門を訪問する機会を得ました。そこで担当者の方から、南海さまの全社的な課題として、選ばれる沿線を目指してブランド価値向上に取り組んでいる、という話をお聞きしました。それで、とにかく何か提案させて欲しいとお願いしまして、オリエンテーションの席を設けていただきました。
>ブランド価値の向上、ですか。大きなテーマですね。
もうひとつ、ブランドブックという社員向け小冊子の制作が進んでいるお話も聞きましたので、そういうインナーブランディング活動への協力とか、そんなイメージを持ってオリエンに臨みました。ところが、オリエンの席でいただいた課題は、思ってもみなかった内容でした。高野山ケーブルカーのリニューアル事業をブランディングに活用したい、というものです。
>ビジュアル的に面白いものが作れそうな気がします。
高野山ケーブルカーは、南海高野線の終点極楽橋駅から高野山の玄関口である高野山駅までを結んでいます。大阪や和歌山にお住まいの方なら一度は乗ったことがあると思います。このケーブルカーの、初代から数えて4代目の新造車両が2019年にデビューしたのですが、それに合わせていろんな企画が社内で進んでいたんですね。
出典 https://www.nankai.co.jp/koya/tenku/
出典 http://www.nankai.co.jp/traffic/railmap.html
>じゃあうちはマンガをやろうと?
いろんな切り口があると思いましたが、手探りの状態でした。鉄道業界の事情にも詳しくありませんし。でも今の時代、やっぱりSNSを活用したWeb施策かなあ、と。スタンプラリーとか、写真コンテストとか、クラウドファンディングとか、イベント中心の企画書になりました。その中に、実はこれが本命だったんですが、とある野球マンガの登場人物を公式マスコットにするという案がありまして。
>有名なキャラクターなのですか?
誰も知らなかったんです。(笑) でも、マンガは面白いかもしれないねという意見が出て、それで、ストーリーのあるマンガそのものを作ろうという方向に動き出したんです。マンガは、高野山プロジェクト(ケーブルカー編)としてWEB上で公開する。ゆくゆくは南海電鉄100駅、それぞれの物語をマンガ化する。壮大な構想が一気に膨らみました。
>100駅もあるんですか!
はい、ちょうど100駅あるんです。とはいえ、まずはケーブルカー編です。高野山ケーブルカーは、正しくは鋼索線と言うのですが、開通までが大変な難工事で、その辺りのエピソードを集めたら面白いだろうな、と。プロジェクトXみたいなのを思い描いていました。
>当然、プロのマンガ家さんに依頼するんですよね。マンガ制作ってどんな工程なのでしょうか?
いやもう、この案件自体がプロジェクトXでしたね(笑) 制作スタートするにあたっては、株式会社アンシャントマンに物語のプロットとマンガ家の選定をお願いしました。アンシャントマンさんは、マンガ文化事業を展開して世界を魅了する、という理想を掲げた制作会社で、代表の松山秀俊氏に出会えたことは幸運でした。
>資料を渡したら、ラフというか絵コンテみたいなものが出てくるのですか?
そんな簡単にはいきません。松山氏によると、こういう案件で重要なのは座組みだそうです。といっても、メンバーを選んで挨拶を交わすだけではありません。クライアントを中心に、自由に意見が言える風通しのよい組織を編成して、コミュニケーションを円滑にする必要があります。ここをしっかりやることで、ようやくクライアントの意向や想いを汲み上げることが可能になります。こういう案件は特に、一方的な思い込みで制作を進めた結果、最後にひっくり返ってしまう、というリスクを避けなければいけません。
>マンガは個人的な仕事のように思えますが、大勢の人が関わってるんですね。
マーケティング、ブランディングとしてのマンガ制作でしたら、その通りです。チームワークの大切さを痛感しました。
>チームが動き始めて、何かが変わりましたか?
はい。ターゲットと目的が明確になりました。ターゲットは、沿線の小学校高学年。目的は、幼い頃から沿線の歴史や魅力に親しんでもらい、地域への誇りや愛情を醸成して「選ばれる沿線」となること。南海電鉄さまの全社的課題である「選ばれる沿線」の意味をようやく理解するに至りまして、その線に沿って、プロットを組み立てる作業がスタートしました
>対象と目的がはっきりして、ようやくストーリーやキャラクターデザインを考えたり、具体的な作業に入るんですね。
株式会社アンシャントマンは1000名を超えるマンガ家と契約しておられます。小学生が対象ということで、まずSF風のストーリーでいこうと。プロットを組み立てつつ、ストーリーに合いそうなタッチのマンガ家さんを何名かご提案いただきました。最終的に作画を依頼したのは、隣野ゆうまさんです。
>マンガ制作で特に重要なことって何でしょうか?
もちろん、目的とターゲットを明確にすることが最優先ですが、具体的な作業に入ったら、ターゲットである読者の気持ちにいかに寄り添うかが大切だと思いました。売り手側の押し付けになっていないか、お客様の悩みや、抱えている問題は何か、それを解決する手助けができているか、そんなことを意識しながら作画を進めました。
©アンシャントマン
>できあがった作品をどう展開するかという問題もありますね。
はい。当初は、WEBで広く拡散して、とにかくたくさんの人に高野山ケーブルカーのことを知ってもらおう、という企画でしたが、目的が『地元の子供たちに選ばれる沿線になる』ことであれば、やり方も違ってきます。結局、マンガ冊子を印刷して、沿線の小学生に配布することになりました。
>マンガ表現の可能性についてどう考えていますか?
活字と比較したとき、マンガは、情報伝達力という点で圧倒的に優れています。脳が処理できる情報量は、マンガは活字の2倍と言われています。視覚から入ることで記憶が定着しやすい、という効果もあるようです。
>「読む」と「見る」では、速度が違うのですね。
速さが感情移入を容易にします。親しみやすいキャラクターやユーモアもマンガ表現の強みです 。この点、企業の販促ツールとして利用価値が高いと思います。商品カタログであれば、マンガ表現を使うことで、商品の特徴、サービスの中身、お客様にとってのメリットが自然に無理なく伝わります。顧客目線で売り込む、つまりお客様の自分ごとに変えるという、営業マンにとって一番難しい課題を、簡単にクリアしてくれます。
>なるほど。眠っていたカタログやパンフレットがマンガ化で息を吹き返すかもしれませんね。
『マンガでわかる○○』みたいなタイトルの本が、書店でもたくさん並んでいますよね。でも、ビジネスツールとしての利用は、マンガの役割の一部にすぎません。なんといってもマンガは日本が誇る文化です。海外の人々がイメージする日本文化は、日常生活にマンガやアニメが溶け込んで混然一体となった世界です。彼らにとって、マンガカルチャーは日本そのものであり、憧れなのです。
>インバウンド向けのマーケティングにも、マンガ表現を使わない手はない、と。
マンガは世界中の人々を魅了しています。国境を越え、異文化の理解を促し、人々を結びつける役割を担っています。今回の仕事で、マンガ表現が持つ大きな可能性と未来を感じました。
まとめ
情報を伝えるには、相手が受け取りやすい表現方法を選ぶことが大切です。マンガにすれば読み解くハードルが下がり、相手の興味を惹きつけることができます。コンテンツのマンガ化は、非常に効果的だと感じました。お客様の伝えたいことを、社会に魅力的に伝えるために、これからも、どんどんマンガをご提案していきたいと思います。
ブランディングに興味のある方、自社の商品、社史をマンガで伝えたいという方は、こちらのページからお問い合わせください。
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